【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】
原発コスト:発電単価は安くない 環境NGOが試算
環境NGO(非政府組織)「地球環境と大気汚染を考える全国市民会議」は31日、原発の発電単価について「過去10年間の発電実績で計算すると1キロワット時当たり10.26~10.55円で、水力、火力発電を上回る」とする調査結果を発表した。原発は二酸化炭素(CO2)を排出せず地球温暖化防止対策に有利とする国は、モデルケースを基に「1キロワット時当たり5.9円」という数字を公表している。市民会議は「実績値で原発選択の議論をするべきだ」と主張している。
市民会議の委託で高崎経済大学の大島堅一助教授(環境経済学)が、全国9電力会社の有価証券報告書にある人件費、原価償却費、燃料費などを基に、水力、火力、原子力それぞれの発電単価を試算した。
1989年度から98年度の10年間の1キロワット時当たりの平均単価は水力9.62円、火力9.31円、原子力8.71円だった。市民会議は、原発から出る高レベル放射性廃棄物の処理や原発解体など国が算出している将来コストを加えて、原子力は10.26~10.55円とはじき出した。
一方、国の総合エネルギー調査会原子力部会は昨年12月、1キロワット時当たりの発電単価を、原子力(出力130万キロワット、稼働率80%)は5.9円、水力(同1.5万キロワット、同45%)13.6円、石油火力(同40万キロワット、同80%)10.2円と公表した。これは、いずれも98年度に運転を開始し40年運転した場合のモデルケースによる試算で、同部会は「(ほかの発電と比べ)原子力は経済性にそん色はない」と結論づけている。
市民会議の早川光俊専務理事は「新型原発で稼働率が高ければ発電単価は下がるが、実際には老朽化原発があり稼働率も低くなる。コストは実績値で議論すべきだし、原発のプラントごとの細かい数値も公表すれば、温暖化対策に原発が本当に有効なのか実りある議論ができるはずだ」と指摘する。
これに対し、通産省資源エネルギー庁は「今後の電源の選択を考える場合、過去のコストではなく、現時点を踏まえて将来を見越した形での試算が妥当だ」と話している。【吉川 学】
(毎日新聞 2000/05/31)