【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】
JCO周辺土壌から、放射性ヨウ素検出


臨界事故を起こしたJCOの周辺から、自然界に存在しない放射性ヨウ素が検出された。京都大原子炉実験所の小出裕章助手(原子力工学)らが4日、土壌や植物から検出した。放射能濃度は、チェルノブイリ原発事故の際、厚生省が輸入食品の基準とした濃度の約10分の1。専門家は「体に重大な影響をもたらす値ではない」としているが、放射線でなく放射性物質そのものが地上に降り注いだことの証拠で、「科学技術庁などは、一刻も早く詳細な調査結果を公表するべきだ」と指摘している。

サンプルは同大学工学部の荻野晃也助手が事故2日後の今月2日、転換試験棟近くの敷地境界から道路を挟んだ地点のヨモギの葉と土壌から採取。小出助手が、放射能検出器で分析したところ、放射性物質のヨウ素131が1キログラム当たり23~55ベクレル検出された。放射性同位元素のヨウ素133も検出されている。

ヨウ素131は、ウランの核分裂反応に伴って生成する放射性物質で、半減期は約8日。チェルノブイリ原発事故の際は国際的にこの汚染が広がり、はるかに高濃度のものを体内に取り込んだ小児らが甲状腺(せん)がんになった。

同臨界事故では、これまで放射線量のレベルなどは公表されてきたが、事故によって生成された放射性物質の種類などは公表されていない。科学技術庁防災環境対策室は「放射性物質のデータはとりまとめ中で、いつ公表するかは分からない」としている。

検出されたヨウ素131の濃度は、自然界の土壌などにあるカリウム40の放射能濃度の約10分の1だが、性質から年間に摂取しても体に影響がないとされる限度は約10分の1と厳しく、小出助手は「カリウム40とほぼ同じ危険性と考えるべき」としている。


◇安斎育郎・立命館大国際関係学部教授(放射線防護学)

食品への影響がただちに大きな問題になるレベルではない。しかし、放射性物質そのものが拡散した証拠として、極めて重要だ。事故時に爆発のような状況になって飛び散ったことを示すのかもしれない。汚染の実態を国民に知らせるために、国のデータの公表が重要だ。

(毎日新聞 1999/10/05)