【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】
動燃で放射性物質漏出 施設浸水 最大 基準の1万倍
科技庁 15年前把握…放置 東海事業所
茨城県東海村の動力炉・核燃料開発事業団(動燃)東海事業所で、低レベル放射性廃棄物の貯蔵施設が長年にわたって浸水し、ドラム缶に詰められた放射性物質が水中に漏れ出していることが分かった。施設外への影響や作業員の被ばくはないという。科学技術庁は26日夕から原子炉等規制法に基づき、現場の管理状況を立ち入り検査した。27日には周辺でサンプリング調査を行う。科技庁は15年前の調査で浸水の実態を把握しながら、その後、状況を点検していなかった。一連の不祥事で動燃を新法人に改革する動きが始まっているが、動燃のずさんな管理とともに科技庁の規制の在り方も厳しく問われそうだ。
浸水していたのは地下式の「廃棄物屋外貯蔵ピット」。ウラン製錬などで発生したウラン廃棄物のうち低レベルの放射性廃棄物の入ったドラム缶を貯蔵している。ピットは5槽に分かれ、現在は約2000本が保管されている。
当初から雨水がたまる傾向があり、ここ数年は浸水がひどくなった。8月上旬の測定では、C槽と呼ばれる槽で深さ131センチも水がたまり、ドラム缶が水没、他の槽の水深は4-11センチだった。昨年8月には、C槽の水位が250センチになっていたこともある。このため、一部のドラム缶は腐食して穴が開き、ウランが漏れ出していた。
放射性物質は主にウランで、浸水中の濃度は、最大で1ミリリットル当たり26ベクレル。施設外への排出基準の1万倍にあたる。動燃は「水は抜いて放射性物質として処理している。床や壁はコンクリート製で、水位が自然に下がることもなかったので、外部への漏れはないと判断している」と説明している。
科技庁は82年、貯蔵ピットを検査して「水たまり」を確認、水を除去するよう指導していた。しかし動燃は以後15年間、抜本的な対策は取らず、たまったら水を抜くという措置を続けてきた。科技庁もその後指導はしていなかった。動燃はまた、このことについて地元の茨城県や東海村に報告していなかった。
94年に動燃が施設近くの土壌を調べた時は普通の20-30倍の濃度の放射性物質が検出されたが「製錬をしていた当時に汚染されていた可能性がある」といい、施設外への漏出があったかどうかは不明だ。
動燃は「来年5月には新しい処理施設ができるため、廃棄物はそこで処理したい。環境への影響については、土壌を採取して調べたい」と話している。
もんじゅの事故や、再処理工場の事故に加え、長年のずさんな管理が発覚したことは、動燃の信頼回復にも影響しそうだ。
一方、科技庁は26日、全国の核燃料加工、使用施設に対し、放射性廃棄物の管理が正しく行われているかどうか調査するよう、通達することを決めた。動燃東海事業所で、ずさんな管理が明らかになったことを受けての措置で、施設は民間も含めて全国に十数カ所ある。
(中日新聞 1997/08/27)