【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】
回復なお遠い 汚染の大地 チェルノブイリ
固定化進むセシウム ストロンチウムは流動化
半永久的に使えぬ農地も
チェルノブイリ原発事故は、放射能による汚染食品でいまも深刻な健康被害を起こしているが、飛び散った放射性物質のセシウム137は土の中で鉱物類と結合し、植物に吸い上げられる量が事故直後の一割程度にまで減っていることが、ベラルーシ放射線植物研究所(本部・ゴメリ)の研究で分かった。その一方で、同じ放射性物質のストロンチウム90は水に溶けだして植物が吸い上げやすくなっていた。このため、同研究所のフィルサコバ所長は「セシウムによる汚染食品がなくなるだけでも、あと2、30年が必要」と分析している。
事故が起きた時、放射性物質は軽い物ほど遠くまで拡散、セシウムはベラルーシの国土の23%に当たる地域を汚染した。同研究所は、この汚染地で地表から1メートルほどまでの土壌を定期的に採取、1-5センチの厚さごとに放射性物質の割合や移動状況を調べた。
この結果、地中に残るセシウムの7-9割は地表から5センチ以内に集中していることが分かった。この地層は野菜や牧草、キノコなどの根が最も活発に活動するため、放射性物質も高濃度に吸い上げる。1994年にべラルーシ保健省が、個人農家が生産したミルクを検査したところ、そのサンプル約3万4000点のうち約1割が汚染限度の基準値を超え、キノコ、木イチゴなど森の産物は8割が基準を大幅に上回っていた。
その一方で、事故から時間がたつにつれて、セシウムは土の中の鉱物類と結合し、植物が吸い上げにくくなってきていることも分かった。地質によって差はあるが、セシウムはほとんどの地点で約9割が土の中で固定化され、植物に吸い上げられている量は、土の中のセシウム全体の1%以下と推定された。このため、牧草などの植物の中の溝度も事故直後の10分の1にまで減っていた。
しかし、国土の約1割を汚染しているストロンチウムは8割が土の中で自由に移動、一部は水に溶け出してイオン状態になっているため、植物の根が吸い上げやすくなっていた。
フィルサコバ所長は、「地域によっては、事故から3、4年でセシウムが完全に固定化され、汚染食品が激減している。しかし、ストロンチウムやプルトニウムの汚染地は農耕地としては半永久的に利用できないだろう」と指摘している。
(朝日新聞 1996/05/01)