【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】
もんじゅ事故 ビデオ隠し
動燃本社 管理職も関与 コピー持ち帰る
高速増殖原型炉「もんじゅ」のナトリウム漏れ事故で事故直後に現場を写したビデオが隠されていた問題をめぐって、動力炉・核燃料開発事業団(動燃)は12日、同社の現地幹部だけでなく本社の管理職ら数人も「ビデオ隠し」にかかわっていたことが社内調査で明らかになった、と発表した。事故当日の昨年12月8日に現地にいた本社の管理職が、翌日夜、このビデオのコピーを本社に持ち帰り、職員数人と一緒に見ていたという。動燃はこれまで、この不祥事は現地のもんじゅ建設所の幹部の指示でなされ、本社は存在を知らなかった、と説明していた。
ビデオは、事故から約6時間半後の12月9日午前2時5分ごろ、現地の職員5人が現場の2次冷却系配管室内で撮った。映像は約10分間で、床に積もったナトリウム化合物などが鮮明に、生々しく写っていた。その存在は約2週間隠され、12月22日になって初めて公開された。
動燃によると、当時、現地に出張中だった本社動力炉開発推進本部の坪田俊秀主幹が12月9日午後4時ごろ、ビデオのコピーを入手し、午後9時ごろ、本社に持ち帰った。同本部は「もんじゅ」の開発を受け持っており、坪田主幹はその場で職員数人とこのビデオを見たという。
これまでの調査で、見たと特定されたのは坪田主幹を含めて4人だが、全部で10人前後になる可能性もある、という。
だが、同月11日ごろ、当時、もんじゅ建設所副所長だった佐藤勲雄・東海事業所担当役から、同本部の職員に「ビデオをしまっておけ」と連絡が入った。このため、この職員はビデオを自分の引き出しにしまった、という。
事故後初の配管室の調査を指示したのは、もんじゅ建設所の当時所長だった大森康民・大洗工学センター担当役と佐藤担当役。2人はビデオ撮影を知っていたが存在を公開せず、調査を担当したプラント第2課の当時の課長とともに同月23日付で現職に異動になった。
一連のビデオ隠しでは、当時現地の最高責任者の理事(敦賀事務所)だった高橋忠男・技術参与も12月28日付で異動している。
動燃は、坪田主幹以外の幹部がかかわっていたかどうかについて、「いまの段階ではわからない」(安藤隆理事)としている。
一方、もんじゅ建設所が12月9日午後4時すぎに撮影した2巻、計約15分間のビデオの核心部分をカットし、1分間と4分間に編集して公開した問題についても、動燃は「現段階の調査では、本社がかかわったという事実は出てきていない」としている。
憤り表す言葉もない
栗田幸雄・福井県知事の話 驚きと憤りを表す言葉もない。極めて遺憾で悲しむべき事態だ。一連の対応に具体的な責任の所在が明らかにされないと、県民の信頼回復も、客観的な原因究明も図りえないものと、深く憂慮する。
(朝日新聞 1996/01/13)