【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】
もんじゅ 海外も注視 増殖炉の“先輩”厳しく
■予想通り危険な事故■計画中止求めよ
福井県敦賀市にある動力炉・核燃料開発事業団(動燃)の高速増殖原型炉「もんじゅ」で起きたナトリウム漏れ事故は、海外でも関心を呼んでいる。
日本の反原発団体への問い合わせは日を追って増加。高速増殖炉開発を現在も続けている国は世界でも例がないことから、「すぐに運転を中止すべきだ」などの意見が少なくない。さらに、日本のプルトニウム政策そのものに対しても、疑問の目が向き始めている。
ドイツでは、テレビが10日夜(現地時間)のニュース番組で、新聞各紙は11日付朝刊で「重大事故」として大きく取り上げた。
フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング紙、南ドイツ新聞などは1面で扱った。
ドイツでは、もんじゅのモデルとなった高速増殖原型炉「SNR300」でナトリウム漏れが相次ぎ、安全性の問題から運転を断念している。このため、もんじゅ事故についての報道は「事故は予想どおり危険なものだった」「高速増殖炉開発に疑問を促す深刻な事故」と厳しい。
また、ベルリンに拠点を置く日独両国市民らによる反核団体「日独平和フォーラム」は、「ナトリウムが一度漏れると完全には除去できない。もんじゅは即刻スクラップにすべきだ」と緊急アピールを出した。
フォーラムの代表は「運転の再開は自殺行為だ。フランスの核実験に続き、日本のプルトニウム政策は世界の批判の的になる」と指摘した。
米国では、経済性と安全性を理由に、やはり開発を断念し、すでに撤退している。もんじゅの事故は12日付のニューヨーク・タイムズ紙など新聞数紙が報じた。
ワシントンにある核管理研究所(ポール・レーベンソール所長)は11日、「今こそ日本国民は、世界を危険にさらす増殖炉計画をやめるよう要求すべきだ」と声明を出した。
フランスは、国内に多数の原発がある。だが、ふだんから原発事故の報道は控えめだという。
もんじゅより一歩進んだ実証炉「スーパーフェニックス」は昨年、事故、トラブル続きで増殖炉として使うのをやめた。現在もトラブルで停止中だ。
リヨンを拠点に、ヨーロッパ約250の組織で作る「スーパーフェニックスに反対する欧州の会」の職員フィリップ・ブルッフさん(28)は「スーパーフェニックスは10年前に動き出したが、実際稼働したのは半年だけ。もんじゅもただちに運転をやめるべきだ」との意見だ。
スウェーデンのストックホルムを中心に、核に反対する約4000人の市民で作る「反核反戦市民団体」の国際担当エイア・リリグリーエンさん(60)は、「原発は危険過ぎる。あらゆる原発を閉鎖するべきだ」と話した。
韓国では13日、「環境運動協会」の十数人がソウルの日本大使館の前に集まり、「もんじゅはアジア破壊だ」「再起動をやめろ」と書いたプラカードを掲げて抗議のデモをした。
(朝日新聞 1995/12/26)