【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】
原発からのプルトニウム 小型の原爆 製造可能 米国立研報告
【ワシントン10日=北島重司】
原発の使用済み燃料から取り出されるプルトニウムでも、戦場でも使う小型の戦術核兵器を製造できるとの報告書を米国立研究所が米政府に提出していた。日本や欧州では、こうしたプルトニウムは軍事用に適さないとの見方があるが、それを真っ向から否定した内容。米政府筋も「必要以上に持つ国には、見直しを促したい」としており、日本も含め、管理強化や保有量の抑制などが核拡散防止の新たな枠組みづくりの政策課題に浮上する可能性が出てきた。
前ホワイトハウス科学技術政策局次長のフランク・フォン・ヒッペル氏(現プリンストン大教授)が朝日新聞とのインタビューで明らかにした。報告書は昨年9月、ホワイトハウスとエネルギー省の担当官に出された。全容は秘密扱いだが、核兵器の設計図などを削除した概要説明書が作成されたという。
ヒッペル氏と概要説明書によると、ロスアラモス、ローレンスリバモア両国立研究所の核兵器設計の専門家グループは、使用済み燃料を再処理して出るプルトニウム(原子炉級プルトニウム)でどれぐらいの性能の核弾頭を製造できるか、核実験データなどをもとに検討した。
テロ集団などが核開発を企てる場合、核弾頭には初期の設計が使われる公算が大きいとして、とくに1950年代に米国が開発した核弾頭をつくるとして分析。その結果、設計上の爆発力よりやや落ちる可能性があるものの、高性能火薬に換算して、少なくても1キロトンほどの爆発規模を確保できると結論づけた。
<原子炉級プルトニウム>
プルトニウムには15種類の「兄弟」が知られているが、核兵器の材料には、核分裂性の239が多いだけでなく、240の割合が少ないほど適しているとされる。240は、起爆剤で一気に爆発させる前に、勝手に爆発を誘発する「やっかい者」だからだ。240の割合が2-3%のプルトニウムをスーパー級、7%以下を兵器級と呼び、プルトニウム生産用の特殊な炉でないと作れない。240が18%以上を原子炉級という。
(朝日新聞 1995/06/11)