【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】

ロケット用原子炉暴走実験 放射能、大量に放出 65年に米国

【ワシントン24日=大塚隆】

米エネルギー省の前身、原子力委員会が1965年1月、ネバダ州の砂漠にある実験場で原子力ロケットに使う原子炉の暴走実験を行い、ウラン燃料の一部を高温で気化させ、大量の放射性物質を故意に放出させていたことが分かった。下院の反核派エドワード・マーキー議員(民主党)が24日、明らかにした。
実験は当時、米国が開発中だった原子力ロケット用の炉の特性などを調べるために行われた。同議員が入手した資料によると、キウイと呼ばれる実験炉を計画的に暴走させ、3000度以上の高温を発生させた結果、原子炉内に「花火の打ち上げ時のような白熱した火花のシャワー」が出現、ウランとカーバイドなどを混ぜた特製燃料の5-20%が気化し、かなりの放射性物質が環境中に放出された。
原子力ロケットの構造は明らかではないが、原子炉で水素ガスを2000度程度の高温にし、ロケットのノズルから噴射する。この原子炉は通常の運転状態でも一部で燃料溶融が始まることから、原子炉の特性や運転による環境への影響を調べるため、暴走実験を計画したらしい。
放射線量は実験場所から数十キロ離れた実験場の境界でも年間被ばく限度量の約5分の1に当たる0.057ミリグレイに達した。放射性物質を含んだ雲はロサンゼルス市上空にまで到達、航空機の調査では数日間影響が観測されたという。
マーキー議員は「意図的な放射能放出は人体実験だ」とし、24日、エネルギー省のオリアリー長官あて書簡を出して、詳しい調査を求めた。原子力ロケットの開発実験は55年に開始されたが、数回にわたる実験でもロケットから放出される放射能による環境汚染を解決できないため、72年に開発を断念した。
マーキー議員は、空軍や航空宇宙局は研究再開を検討していると指摘、こうした実験を繰り返してはならない、と訴えている。

(朝日新聞 1994/08/25)