【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】

ロシア・トムスク7核燃施設の爆発事故
六ケ所村工場は安全か 硝酸で溶かす再処理方式同じ

ロシア・西シベリアの閉鎖都市トムスク7にある核燃料再処理施設で6日に起きた爆発事故は、詳しい原因がわかっていない。この施設は、茨城県東海村の施設や青森県六ケ所村で近く着工する再処理工場と同じ再処理方式になっているようだ。このため、日本でも同じような事故が起こるのではないか、との不安も出ている。これに対して、六ケ所工場を建設する日本原燃(本社・青森市)は、「事故防止の対策は万全」と、安全性に自信を示している。
この再処理方式は、「ピューレックス法と呼ばれ、硝酸で燃料体を溶かし、ウランとプルトニウムを分離する。米国エネルギー啓発協議会(USCEA)の情報によると、爆発は再処理後の廃液のタンクではなく、再処理工程の1つのタンクで起きた。核分裂生成物、ウラン、プルトニウムがそれぞれ分離された後で、「ウラン溶液を入れたタンクが化学的な爆発を起こした」という。
六ケ所工場では、使用済み燃料を細かく切断し硝酸に溶かした後、有機溶媒を加え、ウランとプルトニウムをその中に溶かすことで核分裂生成物から分離する。その後、高濃度の硝酸を使ってウランとプルトニウム混合溶液からウランだけを抽出する。次に、ウランとプルトニウムは、それぞれの精製工程に入る。
硝酸溶液になったウランから、少量残っている核分裂生成物やプルトニウムを取り除く精製工程では、容積を少なくするために、途中で何度か硝酸の一部を蒸発させる。
その際、有機溶媒がある程度以上に残っていて、温度が上がりすぎると、溶媒などが化学反応を起こし、爆発事故につながる。
1953年に米国のサバンナ・リバー再処理工場で起きた事故の原因が、それにあたる。
そこで、この事故の教訓から六ケ所工場では、濃縮する前に残存有機溶媒を洗浄器で取り除くことにしていると、日本原燃ではいっている。さらに分解反応が起こるまで温度が上がるのを防ぐため、過熱しそうになると、自動的に熱供給を断つ装置をつける予定という。
爆発の危険性は、精製工程に入る前にもある。溶液が放射線によって分解して水素が発生するからだ。この水素を爆発しない範囲の濃度に保つため、付属施設内から空気を容器内に常時送り込むようにすると、日本原燃は説明している。
もし爆発や火災が生じた場合でも、各工程のタンク類は小さなセル(小部屋)に収められるうえ、工場内の空気の圧力を外気より低く保つようにするので、放射性物質が建物から外に出ることはない、という。
日本原燃再処理本部の築地道夫・技術総括部長(53)は、「ロシアの施設が軍事用なのに対して安全審査の基準も厳しく、同じような事故が起きるとは考えられない」という。こんどの事故が、六ケ所工場の設計などに影響を与える可能性は少ないとの見方だ。だが、「事故の詳細が明らかになれば、運転・管理の面で参考にすべき点は出てくるだろう」と話している。


高い燃焼度に懸念の声

青森県六ケ所村で、1991年10月に開かれた公開ヒアリングで意見陳述した元日本原子力研究所研究員の市川富士夫さん(63)は、六ケ所工場で扱う燃料の燃焼度が、東海再処理施設や仏ラアーグ工場の最新施設UP3よりも高いことを挙げ、「実績の乏しい実験工場だ」と批判する。
燃焼度は、燃料を燃やした程度を示し、長時間燃やした燃料ほど、燃焼度は高い。燃焼度が上がると、燃料内部の放射性物質の量が増え、不溶解物質や放射線量の増加、溶媒の劣化を招くほか、プルトニウムの量も増え、臨界制御の難しさが増す、という。
このほか、放射性物質のトリチウムとクリプトン85を除去せずに外部に放出することも「技術が完成していないあかし」と主張している。

(朝日新聞 1993/04/14)