【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】
チェルノブイリ事故から6年 子どもの甲状腺がん急増

【モスクワ25日=坂本正明】

原発史上最悪の旧ソ連・チェルノブイリ原発事故から26日で6年になる。放射能による汚染がとくにひどかったベラルーシ、ロシア、ウクライナ各国では、放射線被ばくによるとみられる子どもたちの甲状腺(せん)の異常が増えるなど、健康への被害が、潜伏期間を過ぎて目立ち始めている。しかし、深刻な経済危機で医薬品や医療器具の不足は解消せず、住民の不安は高まる一方だ。
健康への被害で最も心配されているのは甲状腺がん。事故で大量に放出された放射性ヨウ素131は甲状腺に集まりやすく、甲状腺腫や機能低下を起こし、がんを誘発する恐れがある。
放出された放射性物質の70%が降り注いだといわれるベラルーシの首都ミンスクにある第1病院では、14歳以下の子どもたちの甲状腺がんの手術が、事故後急激に増加。1980年から87年までは、せいぜい1年に1人ぐらいだったのに、88年は6人、89年は18人、90年は33人に増え、昨年は9月までで50人を超えたという。
チェルノブイリ原発を抱えるウクライナの首都キエフの内分泌研究所でも、90年の手術が20人にのぼった。
大地の汚染も続いている。事故で放出された放射能は1億キュリーにのぼる。中でも半減期が30年と長い放射性セシウム137による汚染は深刻。これまでのすべての大気圏内核実験で地上に降り注いだセシウム137の100倍に相当する1平方キロ当たり15キュリーという高濃度汚染地域が、3カ国で1万平方キロに及び、この地域内に住む約400万人はいまでも不安な毎日を送っている。
各国とも汚染状況をさらに詳しく調べているが、ロシアでは最近、汚染された行政区の数が12から14に増えるなど、汚染の広がりはまだ続いている。

(朝日新聞 1992/04/26)