【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】
チェルノブイリ事故から5年 悲惨 被ばくの後遺症 ソ連3共和国
汚染地域で白血病急増 家畜、植物に奇形
ソ連チェルノブイリ原発事故による放射能汚染の健康被害などを調査していた国際原子力機関(IAEA)の国際諮問委員会(重松逸造委員長)はさる5月に「放射線による健康被害はみられない」という報告書を発表した。だが、ウクライナ、白ロシア、ロシアの3共和国の1平方キロメートル当たり1キュリー以上の汚染地域20万平方キロメートル(日本の領土の約半分)の住民は、事故から5年以上たったのに子供の白血病や甲状腺(せん)がんなどの増加、家畜動物の奇形、今後の遺伝への影響などで不安な生活を送っている。
IAEAの報告は汚染地域と非汚染地域の住民の疫学的調査比較の結果。事故直後、大量の放射線を浴びて避難した住民や汚染物の除去作業に動員された人たちは除かれているし、既に入院・治療している白血病や甲状腺がんの患者は対象にされていない。
このためウクライナ、白ロシア、ロシア共和国政府はIAEA報告について「実態からずれ過ぎている」と報告書の一部削除をIAEAに要求した。白ロシアの場合、政府も「汚染地域のがんは86年に40%増加、その後毎年6%ずつ増えている」といい、マルコ同共和国原子力研究所所長は「白血病は7-10倍、甲状腺がんも2-4倍に増えている」とがん急増の対策に追われているからだ。広島、長崎の被爆者の白血病などのがんも5-10年してから目立ち始めたといわれている。
それだけに「甲状腺障害は慢性的ヨード不足が原因。奇形は近親結婚のためではないか。がんの増加も統計の誤差にすぎない」といった一部のIAEA調査団メンバーの発言には地元の専門家からも反発が強い。
チェルノブイリ原発事故の汚染地帯で何が起きているのだろうか。
86年4月26日の事故発生以来、現場や汚染地域で放射線の影響の実態を追ってきたソ連ノーボスチ通信の資料の中から放射線の影響かとみられる写真(※江原注:割愛)をピックアップしてみた。もちろん、これは放射線との因果関係がはっきりと証明されたものではない。だが、放射能汚染で何かが起きていることだけは間違いない。
<写真説明文>
・事故直後の消防に参加した大工のスタロボイさん。全身に放射能を浴び、連邦保健省第六病院で治療を受けていた=1986年
・チェルノブイリ原発事故から2キロ地点で見つかった異常な植物。左は正常なもの。右は突然変異のためか茎が平べったい=1989年
・ウクライナ共和国で生まれた奇形の豚。虹彩(こうさい)と瞳(ひとみ)がない=1989年
・白ロシア共和国ミンスクの第1臨床病院で白血病の治療を受ける子供=1990年
(中日新聞 1991/08/07)