【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】
ソ連原発事故 ミス主因に疑問 異常発生は運転停止後
生存者証言から監視委判断

【モスクワ28日=松本記者】

世界の原発史上最悪の事故となった1986年4月26日のソ連・チェルノブイリ原発の事故原因について、ソ連国家原子力安全監視委員会(マリシェフ委員長)は、28日までに、生存者の証言などから、

(1)運転員が緊急停止ボタンを押したのは、原子炉を停止させるための通常の行動だった

(2)緊急停止ボタンを押してからはじめて、原子炉の出力が急増した──などの新事実を確認した。これまでいわれていた人為ミス主因説を覆すもので、最終報告書は今年末に発表される。
同委員会はすでに今年2月、チェルノブイリ型原子炉の設計に欠陥があり、制御棒が緊急停止ボタンによって挿入されると、逆に核反応が促進されるということを指摘していた。
今回の調査では、事故当時、室内には、死亡したトプトーノフ運転員とアキーモフ当直長のほか、ジャトロフ副技師長(事故責任を問われ服役中)、ガジン技師長、原発の交代当直長のテレグブ民ら6人がいたが、いずれも、「爆発の前に実験が終わり、そのときは何も異常はなかった」と証言している。その証言を裏付ける計器のデータもあるという。
トプトーノフ運転員は、実験中、1人で制御棒のコントロール盤の前に座っており、アキーモフ当直長も背を向けてそのそばに立っていたという。トプトーノフ運転員は、実験が終了したあと、アキーモフ当直長の方を向いて「では、停止しましょうか」と言った。すると、アキーモフ当直長は「大丈夫」と答えたという。そこでトプトーノフ運転員は、吸っていたたばこを消して、AZ5ボタンのふたをゆっくりと開けてからボタンを押したという。
こうした証言について、専門委員会の委員長であるステインベルク・ソ連国家原子力安全監視委員会副委員長は「異常事態が生じていたのならば、これだけ落ち着いていることは考えられない」と話している。
運転員のこうした行動から判断して、運転員たちは制御棒の設計欠陥に気付かず緊急停止ボタンを押したため、核反応が進み爆発につながったという見方が強まっている。

(朝日新聞 1990/09/29)