【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】
'40年代に放射能被害 長崎原爆用 米の核施設 住民、大量被ばく

【ワシントン12日=吉田(文)特派員】

米エネルギー省は12日、長崎原爆用プルトニウムをつくったワシントン州のハンフォード核施設で1940年代に放射能漏れが相次ぎ、周辺住民の中にはソ連・チェルノブイリ事故以上の被ばくをしていたことを示す調査報告書を公表した。核爆発による一般市民の大量被ばくは広島原爆が最初だが、実は原爆製造段階でも、一般市民が放射能汚染に巻き込まれていたことを米政府が初めて明らかにしたもので、すでに住民の健康追跡調査も進められている。
ハンフォード核施設には、チェルノブイリ原発と似たタイプの原子炉があり、第2次大戦中、原爆製造用の秘密施設として建設された。
調査報告書によると、1944年から47年の間に、同核施設周辺の住民27万人のうち、5%にあたる1万3500人が甲状せんに33ラド以上の放射線を受けた。被ばくの大半は、放射性ヨウ素によるもので、汚染された牧草を食べた乳牛の体内で放射性ヨウ素が濃縮され、その牛乳を飲んだ人が内部被ばくした。
乳幼児はとくに放射性ヨウ素の甲状せんへの蓄積率が高いため、がんを含む甲状せん異常の発生率が高いとみられており、周辺地域にいた乳幼児1400人のうち、1200人が15-650ラドの放射線を浴びたと分析。中には2900ラドもの放射線に襲われた子どももいるとしている

また64年から66年にかけて、同核施設の近くを流れるコロンビア川も汚染された。下流の住民7万人について調べたところ、放射性リンによる被ばくが、骨で最高0.05ラド、消化器官で最高1.7ラドあったとの分析結果を得た。
今回の報告書は調査の途中経過をまとめたもので、さらに分析を進める方針。またこれらの被ばくによる健康への影響については、米疾病管理センター(CDC)が別途、疫学調査を進めている。
ワトキンズ同省長官は「放射線のレベルは健康障害を起こす危険性があるものだ」との見方を示している。

(朝日新聞 1990/07/13)