【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】
チェルノブイリ原発の労働者 事故後、死亡率10倍に
ソ連の核・環境小委員長語る

【ワシントン28日=吉田(文)特派員】

「地球環境問題に関する国際議会人会議」(米上院主催)に出席するため訪米中のユーリ・シチェルバク・ソ連最高会議核・環境問題小委員長は27日、朝日新聞とのインタビューに応じ、チェルノブイリ原発事故で15万人に放射線障害と思われる症状が出ており、同原発労働者600人の死亡率が、がんも含めて以前の10倍に跳ね上がったほか、大量に放出された放射性ヨウ素によるとみられる子どもの甲状せんがんも発生していることを明らかにした。また同委員長を含む最高会議訪米団は同日の記者会見で、放射線障害の子どもを救済する財団を作るよう、米国などに要請すると話した。
同委員長によると、放射能を大量に浴びた人は150万人に上り、チェルノブイリの南約120キロにあるウクライナ共和国の首都キエフ地域では、白血病の発生率が事故以前に比べ2.6-3.8倍に急増している。
また、ソ連の市民団体「チェルノブイリ同盟」が出した「死者は少なくとも300人」という数字は、消火や除染作業にあたった人を追跡調査したもので、この中には、作業中、原発の壁にかけていた水が跳ね返って体にかかった人や、汚染した水を誤って飲んだ人もいるという。
本格的な除染作業には、シベリアなどソ連各地から60万人が駆り出され、作業終了後各地に戻ったため、十分な追跡調査が行われていない。しかし、25日最高会議で採決された法律によって、政府は追跡調査を義務付けられたという。ただ放射線障害が出ている15万人という数字は政府が公表した。
同委員長は「チェルノブイリは広島、長崎以来の悲劇であり、真実を世界に知ってもらう必要がある。それが今回の訪米の大きな目的である」と話している。

(朝日新聞 1990/04/29)