【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】
父の被ばくも原因 英核施設周辺の白血病多発 英で論文
【ロンドン16日=竹内(敬)特派員】
英国のセラフィールド核燃料再処理施設周辺に多発している子どもの白血病は、父親がその施設で働き、高い放射線被ばくを受けている場合に多い、という研究を、英サウサンプトン大学のマーチン・ガードナ一教授らが、医学誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」(17日付号)に発表した。精子が突然変異を起こすのが原因と考えられる。
放射能で汚染された食べ物などによる体内での被ばくが原因というこれまでの説と全く異なり、「父から子に伝わる」というかなり衝撃的なメカニズムの可能性を示した。英国政府もこれを重視している。
同教授らは、核燃料再処理施設周辺で生まれ育ち、1950年から85年までの間に白血病にかかった25歳以下の52人について調べた。
その結果、例えばある村では5人の子どもが白血病にかかったが、うち4人の父親は核燃料関係施設で働き、妻の妊娠までに7-13年にわたり計97-188ミリシーベルトの被ばくをしていたなど、発病と父親の外部放射線被ばく量との間に強い相関があった。とくに父親の被ばく量が100ミリシーベルト(10レム)を超えると、子どもの発病の危険性は一般の6-8倍だった。国際放射線防護委員会の放射線作業者の被ばく制限値は年間50ミリシーベルトとなっており、これと比べるとこの4人の被ばく量はそれほど大きいとはいえない。
食物からの放射能摂取、放射能の多い海岸での遊び、母親の妊娠中のレントゲンなど、他の要因では説明できなかった。
放射線は精子を傷つけるが、それが人間の子どもに影響するというはっきりした疫学データはこれまでほとんど発表されていなかった。
今回の発表は、原子力施設で働く人に大きな不安を与えることになるだけに、英国政府はこれを重視、15日、独立した学界関係組織の「環境放射線の医学的側面に関する委員会」に緊急の課題として検討するよう依頼した。
ネズミの実験では 放射線量3-4倍
野村大成・大阪大医学部教授(放射線基礎医学)の話 私たちはかつてハツカネズミの雄に放射線をあてると、子どもにがんが増えることを報告している。ただその時の放射線量は、今回の父親に比べると3-4倍高いし、日本の20歳以前の被爆2世で白血病が増えていないなどの事実とは矛盾する。しかし、非常に大事なことなので、さらに詳しい調査をしてほしい。
(朝日新聞 1990/02/16)