【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】

スリーマイル事故原発 圧力容器に亀裂? 破壊寸前だった可能性も


【ワシントン4日=吉田(文)特派員】

10年前に炉心の半分以上が融けるという大事故を起こした米スリーマイル島(TMI)原子力発電所2号炉の圧力容器の底に2本の「亀裂のようなもの」が走っていることが、最近の炉心内部調査でわかった。米原子力規制委員会(NRC)筋が4日までに明らかにした。緊急時に圧力容器が破壊すると溶けた核燃料が外に流れ出して大量の放射能をまき散らす恐れが大きい。TMI事故は炉心溶融だけでなく、圧力容器破壊という最悪事態の寸前までいっていた可能性があり、「亀裂のようなもの」の重要度を調べるため、炉心底部の本格的調査が近く、NRCの指導で始まる。


TMI原発では、圧力容器内で溶けた核燃料や崩れ落ちた残がいを取り除く作業が、容器の上の方から底部に向けて進められ、この夏、底部付近まで除去が進んだ。「亀裂のようなもの」は、事故後初めて圧力容器底部を白黒ビデオカメラで撮影して発見した。

見つかった場所は炉内に温度計や中性子計測器を送り込む「案内管」(直径2.5センチ)を圧力容器に溶接している部分。2カ所にみられ、大きい方は長さ約10センチで幅が数ミリ。ビデオでは黒い影のように映っている。
この映像について、発電所当局者は「まだ、はっきりと亀裂とは断定できない。事故が進行中にできたのか、その後かもはっきりしない」とし、亀裂であったとしても、厚さ13センチの圧力容器が破れるような亀裂とは考えにくいとの見方を示している。また、現在進められている核燃料除去作業にも支障がないとし、計画通り作業を続けることにした。
しかし、NRCの専門家らによると、亀裂が溶接部を越えて圧力容器の内張りであるステンレス鋼層に達している可能性がある。その場合、その外側の炭素鋼層がどの程度傷んでいるかが大きなポイントになる。圧力容器は、大事故の際、放射能が外部に漏れ出るのを防げるかどうかの重要なカギを握るシステム。今回発見された「亀裂のようなもの」は、圧力容器が事故時にどこまで耐久性があるかという問題にかかわるため、黒い影の部分の金属切片を採取するなど、NRCの指導のもとで徹底調査することになった。


(朝日新聞 1989/08/05)