【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】

ソ連原船やはり炉心溶融 60年代 北極海で死者30人?
CIA文書に記述 68年には原潜沈没で90人死亡

【ワシントン22日=共同】

ソ連の原子力砕氷船レーニン(19,240トン)が1960年代の後半、北極海域で炉心溶融事故を起こし、25-30人の死者と多数の負傷者を出していたことが、共同通信が22日までに米中央情報局(CIA)から入手した文書で確認された。


レーニンは現在も運航中で、事故による放射能汚染の規模、その後の改造の方法などは全く明らかにされていない。原子炉の深刻な事故としては、79年の米スリーマイルアイランド原発事故、86年のソ連チェルノブイリ原発事故がよく知られているが、実際には、これらより先の60年代に海上で深刻な炉心溶融事故が起きていたわけで、ソ連当局が事故を一切公表せず、米情報当局も沈黙を保ってきたことは論議を呼ぶことになろう。
報の自由公開法により入手した文書は「機密情報リポート」などと記されており全部で48ページ。


レーニンに関しては4つ記述がされており「放射能事故のためソ連当局が沈没させたとのうわさは否定された」「事故発生時に14人が死亡した」「1基の原子炉が突然の破滅的事故で溶融した」「事故は放射能に汚染された水漏れにより発生、死者は25人から30人とみられ、さらに多数が放射能障害でレニングラードの第1海軍病院に運ばれた」──などと書かれている。


これらの文書は、いずれも機密性、情報源の保護のため、多くの部分が黒インクで抹消されており、レーニンの事故発生地点などの情報も明らかでない。
レーニンの事故は西側の一部で過去に伝えられたことがあるが、今回、CIAの文書によりその事実が確認された。事故の発生時期は「66年に原子力装置の根本的改良を行った」(原子力年鑑)と伝えられることから、その直前ではないかとみられる。


これらの文書は、原子力潜水艦の事故に関する情報も多数含んでおり(1)68年に北方艦隊(司令部セベロモルスク)の潜水艦がムルマンスク近くの入り江で沈没、90人が死亡(2)70年の「オケアン70」海軍演習の際、火災が原子炉に及ぶのを避けるため潜水艦が沈没、多数が死亡(3)72年12月北米東海岸の大西洋で潜水艦の核魚雷が事故を起こし放射能が漏れた(4)73年2月、北方艦隊の潜水艦の放射能漏れ事故で数人が死亡した──など多くの事故に関する情報を記載している。


最近ではことし4月、ノルウェー海域での事故発生が伝えられたが、国際的な反核・環境保護組織グリーンピースの集計ではソ連潜水艦の事故は全部で三十数件に上るとしている。


<原子力砕氷船レーニン> 世界最初の原子力推進船として、ソ連レニングラードのアドミラルティ造船所で建造され、1959年進水した。全長134メートル、全幅26.8メートル、19,240トンで、進水時は3基の原子炉を搭載。うち2基を常時、稼働させ、北極海に面するムルマンスクを基地に活躍した。
60年代半ば大規模な原子力事故によって、1年以上放置された後、造船所にえい航され、原子炉2基を取り換えて再就航した。現在、熱出力9万キロワットの加圧水型軽水炉2基が搭載されているといわれる。(共同)


(朝日新聞 1989/05/23)