【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】

海水から人工放射性物質テクネチウム 東海村周辺
原子力施設が関係? 人体には影響なし

【水戸】

原子力施設が集中立地する茨城県・東海村周辺の海水から、半減期21万年の人工放射性物質「テクネチウム99」が、大気圏内核実験の放射性降下物を上回る濃度で検出されていたことが、科学技術庁放射線医学総合研究所那珂湊支所(同県那珂湊市)の調査で分かった。
検出濃度は国の水中許容濃度をはるかに下回り、人体や海産物への影響はほとんどない安全なレベルだが、この調査結果はテクネチウム99が東海村の原子力施設から低レペル廃液として放出されている可能性を示唆している。
一方、テクネチウム99を含む使用済み核燃料を再処理している動力炉・核燃料開発事業団東海事業所は独自の調査を基に「放出廃液からテクネチウム99は検出されていない」としている。
テクネチウムは半減期が極めて長いだけに、発生源の特定とともに長期的な環境放射能調査が必要になりそうだ。
調査したのは、同支所海洋放射生態学研究部の平野茂樹主任研究官らのグループ。東海村の原発や再処理工場から11-7キロ南に位置する那珂湊市磯崎町の同支所前の海水を対象に、一昨年12月から調査を始めた。
その結果、海水中のテクネチウム99の濃度は昨年2月末-同3月初めに海水1立方メートル当たり226ミリベクレルを検出したのを最高に、7カ月間で検出限界(1立方メートル当たり10ミリベクレル)以下まで大きく変動していた。
さらに海水中の濃度が最高値を記録した昨年3月、同県北茨城市-千葉県銚子市の太平洋沿岸5カ所で多年生の海藻の1つアラメを採取して、蓄積傾向を調べた。
那珂湊で1キログラム当たり0.64ベクレル、大洗で同0.08ベクレル、日立で同0.02ベクレルと東海村周辺の試料だけからテクネチウム99が検出された。
核実験の降下物によるテクネチウム99の海水濃度(バックグラウンド)は、1立方メートル当たり10ミリベクレル以下のため、調査関係者は、バックグラウンドを超えるテクネチウム99を含む水塊が、短期間で同支所の沖合を移動している、とみている。
しかし、検出されたテクネチウム99が、原子力施設から放出された、と断定するにはさらにデータを積み重ねる必要がある、と指摘している。


<テクネチウム> 金属元素の1つで原子番号43。1937年、モリブデンに重陽子を照射して初めて人工的につくられた。質量数92から107まで16種類の同位体がある。テクネチウム99は核分裂によって大量に生成され、比較的にエネルギーの弱いベー夕線を出す。半減期は21万年と長いが、体内に入って排せつされるまで体内で半減する期間は20日以内、と短い。本来、天然にはほとんど存在しなかったが、過去の大気圏内核実験や核燃料サイクルの進展に伴って環境中に放出されるようになった。


(中日新聞 1989/03/13)