【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】
30年前のソ連核事故現場 今も広域汚染
スウェーデン社衛星写真を分析
チェルノブイリ原発事故以前にソ連の軍事核施設で起きた「ウラルの核惨事」と呼ばれる大規模な核廃棄物飛散事故現場を、地球観測衛星ランドサット(米)とスポット(仏)がとらえ、そのデータから惨事の存在が確認されたことが2日、明らかになった。東京で開かれた平和シンポジウム(東海大主催)で、人工衛星のデータを処理しているスウェーデンのスペース・メディア・ネットワーク(SMN)社担当者が講演した。約30年たった今でも2万5000ヘクタールもの範囲が閉鎖され、30以上の村落や農地が打ち捨てられたままになっているという。
事故現場は、ウラル山脈の東側にあるキシュチュム軍事核施設。ソ連初のプルトニウム製造施設だった。
ソ連は1957年から翌年にかけて起きたこの事故を公表していないが、亡命者のもたらした情報などから、死者が100人以上にのぼる原子力史上最悪の事故、とする説もある。
SMN社のクリスター・ラールソンさんによれば、米のアース・オブザベーション・サテライト社と、仏国立宇宙研究センターが衛星によって収集したデータをコンピューター処理した。写真(※江原注:割愛)はそうして得られたものの1つで、下の白い部分が、英国に亡命した生物学者ジョレス・メドべージェフ氏がかつて「核廃棄物を安易に近くの湖に捨て続けていた」と指摘した、事故発生場所としている。ここで廃棄物の崩壊熱が高まって“沸騰”、廃棄物が飛散する原因となったらしい。
写真右の湖の右端の白い線は、湖内の汚染水が他地域へ流れ出るのを防ぐ仕切りだという。さらに拡大した写真からは、この事故で粉末化した廃棄物が風に乗って北に向かって拡散し、汚染された地域を、周辺地域から仕切るフェンスなども識別できるという。
なお、核施設から北西の湖(写真の左上)の色が変わっているのは、熱い冷却水が排出されているためで、現在核施設が稼働を続けているのがわかるとしている。そればかりか、右上部の建物は、新しい原子炉群で、77年以降に建設され、去年から今年の間に一層拡張されているという。
(朝日新聞 1988/12/03)