【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】
再処理施設設置直下に断層 原燃内部資料で判明
核燃料サイクル施設のうち、再処理施設の予定地に2つの断層があり、安全性をめぐって国関係者が調査不足を指摘したり、安全性が印象づけられるようさまざまなアドバイスをしていることが、同施設建設を担当する日本原燃サービスの内部資料から明らかになった。これは社会党県本部が7日、独自に入手した資料として公表した。同施設は11月に事業許可申請の予定で、同社は「この時期にそんな資料が出るはずはない」とコメントを避けているが、社会党は「事業者と国が『断層隠し』にやっきとなっている実態が明らかになった」として、今後は地震データの公表を求め、事実解明に乗り出すほか、国会の場でも追及する。
社会党 データ公開要求
同党が入手した内部資料は、再処理工場の立地に関する地質調査についての国関係者3人と同社とのやり取りと、現場の図面。図面にははっきりと2つの断層が示され、再処理施設のいくつかの建物はその真上に建設される設計となっている。
社会党が発表したやり取りの部分は資料からの抜粋。反対派を警戒し、安全性を印象付けるデータ作成に腐心している様子が生々しく記されている。例えば8月23日の科技庁安全審査官とのやり取りでは、派生断層の可能性をめぐり、原燃サービスの調査に対して「2つの断層の派生断層が数多く存在することが考えられる」とし、「(もっと調査することによって派生断層が)ないことを明らかにして、反対派に論陣を張るべき。第2試掘坑を実施するのが申請受理の条件」と原燃サービスの資料に厳しく注文をつけている。
また、7月28日、現地へ断層調査に訪れた通産省工業技術院地質調査所環境地質部地震地質課の担当官は、「f-1断層の北の連続は、JNFI(日本原燃産業)サイトの断層とも関連するかもしれない」と述べ、原燃産業が担当するウラン濃縮施設や低レベル廃棄物貯蔵施設のサイトにも断層が存在する可能性を指摘する部分もある。
同担当官はさらに「今の状況の証拠だけでは第三者から活断層といわれたら十分説明できない」「将来裁判になったとき、このままの証拠では活断層でないとは言い切れない」と講評するなど「断層隠し」と誤解されかねないやり取りもある。
県や事業者はこれまで、「サイクル施設が立地する地盤は安定しており、断層はない」としてきたが、今回の内部資料でこうした説明がきわめてあいまいな根拠しか持たなかったことが浮き彫りにされた。「安全性は国任せ」の姿勢を取り続けてきた県にとっても、今度の内部資料の公開はショック。今後、国のデータに対する不信がますます募ることにもなりかねず、安全議論に大きな影響を与えそうだ。
原燃 強引な“断層隠し” 社会党は徹底追及の構え
社会党は記者会見で明らかにした原燃サービスの内部資料について、問題点を指摘しながら「断層隠しを徹底的に追及していく」と厳しく批判している。
同資料によると、試掘坑調査に関する原燃サービスと科技庁核燃料規制課の安全審査官のやり取りで、原燃サービス側は「ボーリングのデータを総合して重要構造物の基礎地盤を把握しているので新たに試掘坑を掘らなくても十分評価できる」「重要な建物の直下には派生断層がない」と主張。これに対して審査官は「ボーリングデータから直下に派生断層がないので良いという理屈は一番甘い妥協案であり、派生断層は否定できないと反対派から指摘されると非常に弱い」「直下は否定したとしても1本でも派生断層が推定されればその延長が重要な建物に及ぶ可能性もある。従って第2試掘坑を掘って派生断層がないことを明らかにし、反対派に論陣を張るべきだ」と指摘している。
また、鷹架中部層の地盤安定評価について原燃サービス側は「再処理施設の基礎地盤は軟岩で等方均質地盤」と説明、審査官は「AC(精製)建屋に関してだけの解析ではだめだ。地盤に何か問題があると反対派に言われかねない」などと指摘している。
また、再処理施設の事業許可申請(11月予定)との関連で、原燃サービス側がこれまでの調査に基づいた地盤安定性評価に現在の試掘坑の増掘調査などを補強して申請をクリアさせたい意向を示したことに対し、審査官は「それだけではだめだ。11月の申請には最低限試掘坑内での中部層に対する岩盤試験が必要だ。さらに派生断層の観点から重要な建物すべての直下で申請にまたがっても第2試掘坑を実施することが申請受理の条件だ」と述べている。
これについて社会党は「安全性の評価が不十分なまま事業許可申請を急ごうとする姿勢が明白だ」と指摘。
一方、通産省工業技術院地質調査所の担当官が断層調査で現地入りした時の打ち合わせ議事録によると、担当官は「断層の北の連続は原燃産業サイト(ウラン濃縮、低レベル廃棄物処理を担当)の断層とも関連するかもしれないので調整するように」「ピット1は構造性の断層と思わないが、将来、裁判になった時などこのままの証拠で活断層でないとは言い切れない」などと述べている。
青森市より強い岩盤
木村敏雄東大名誉教授の話 この断層は1000万年ぐらい前の地層にできているもので、その上を約300万年前にできた地層が覆っており、青森市内よりは強い岩盤となっている。ボーリング・コアで見ると、幅も大きくなく、地震があっても大丈夫と思っている。断層の真上には放射能にかかわる重要施設を置かないよう、念を入れているはず。
危険性に変わりない
宮城一男弘大教授の話 今回の資料は、断層があるとして私が前から主張してきたごく当然の内容を示したに過ぎず、驚くことではない。第4紀層まで伸びている活断層かどうかは分からないが、活断層でないとしても、危険なことに変わりはなく、地震が起きれば断層に沿って被害が集中するのは明らか。その上に重要な施設を建てるというのは議論以前の問題。
(東奥日報 1988/10/08)