【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】
東電福島原発の圧力容器 無理に整形と証言 元設計者
日立製作所の系列会社「バブコック日立」(本社・東京)の元原子炉設計者が、東京都内で28日開かれた原発シンポジウムで、「ある原子力発電所で、製作上のミスからひずんだ形になった圧力容器を、ジャッキで無理に形を整え、そのまま実際に運転しており、安全性を心配している」と指摘した。
原発の心臓部ともいえる圧力容器をめぐって安全性を問う具体的な指摘がされたのは初めて。問題の原発は東京電力福島第1原子力発電所4号炉で、東電側はひずみを修正した事実は認めたが、「安全上は問題ない措置だった」としている。
発言したのは、いまは翻訳家の田中三彦さん(45)。シンポジウムは、東京・霞が関のイイノホールで、ダイヤモンド社の月刊誌BOX編集部が主催して開かれ、田中さんは日本原子力発電の板倉哲郎・技術開発副本部長や、作家の広瀬隆さんらとの討論の中でこの発言をした。
圧力容器は、ウラン燃料を内部に収め、その核分裂反応を一定に抑えるための水をためている。いわば原発の心臓部。円筒形で、厚さ10センチ前後の鉄板で作られている。
田中さんによると、修正したのは昭和50年ごろ。圧力容器はほぼ出来上がり、横に寝せて最後の焼きなまし作業を終えた時、真円型であるべき断面が、だ円型になっており、許容される誤差から大幅に外れていた。このため、内部に大型のジャッキを突っかい棒のように当てて形を整え、再び加熱する処理をとった。当時、田中さんは別の部門に移っていたが、トラブルが起きたために呼び戻され、修正の際に容器にかかる力の解析にあたった、という。
田中さんは「何度も高温にさらされたことで、材料の特性は完全に失われている可能性がある」としている。
29日会見した東京電力の乙葉啓一・原子力発電部長によると、同炉の圧力容器(直径5.7メートル、長さ17メートル)を製作中に、直径が最大49ミリ狂ってしまった。許容範囲の34ミリを上回ったため、中に3本のジャッキを入れて、力をかけたまま、熱を加える処理をして、形を修正した。この作業については、日立側から連絡を受け、問題がなかったので、東電側も同意した、としている。
通産省、日立を含む三者は、この処理について「ジャッキを使って圧力容器に加えられたひずみは極めて小さく、その健全性には何ら影響はない。修正作業によって、この容器には3時間余分に、熱を加えられているが、その熱処理の時間は合計36.5時間で規定の40時間の枠のなかに収まっている」と、話している。
(朝日新聞 1988/06/30)