【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】
成層圏汚染し徐々に降下 ソ連原発事故の放射能 気象研が解明
【筑波】
昨年4月のソ連・チェルノブイリ原発事故で大気中に放出された放射性物質が、地上10-50キロの成層圏にまで到達し、今年に入って徐々に降下し始めたことが気象庁気象研究所(茨城県・筑波研究学園都市)の調査で分かった。事故で放出された放射性物質の量や大気中での挙動を分析する上で貴重なデータになりそうだ。
同研究所の青山道夫研究官らは、毎月の雨を集め、自然界には存在せず、核実験や原子炉内で生成される人工的な放射性元素などの含有量を調べた。
その結果、セシウム137の降下量は、事故直後の昨年5月に1平方メートル当たり131ベクレルと事故前の1350倍に急増。その後次第に減少して同11月末には0.07ベクレルにまで下がった。ところが今年になって再び増加し始め、4月には0.16ベクレルにまで増えたことが分かった。
また、事故以前には検出されず、事故後に67ベクレルと急増したセシウム134も同様の傾向を示した。
成層圏より下の対流圏に舞い上がった放射性物質は雨やちりと一緒にすぐ降下する。このため今年に入って増加した放射性物質は、成層圏に達していたものが成層圏と対流圏の交換が盛んになる春先に降下し始めたと考えられた。
青山研究官によると、セシウム137は自然界にも存在するが134はすべて事故によるものとみられ、両者の比率を調べることによって、137の降下量のうちどれだけが事故に由来するかを計算できる。その結果、降下量の約8割、月によってはほぼ全量が事故によるものと分かったという。
大規模な核実験による放射性物質の一部が成層圏に達することは知られていたが、今回のデータは地表部のごく限られた場所から出た放射性物質も成層圏に達することを示している。
(中日新聞 1987/11/15)