【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】
ソ連原発事故 想定超えた被害 放射性物質が多く沈着
京都大原子炉実験所の瀬尾健助手らのグループは「ソ連チェルノブイリ原子力発電所事故による放射性物質の環境への放出は、米国政府の原発安全性評価リポートとして知られるラスムッセン報告(1975年)が想定した最大規模の事故例を上回った」と、このほど同実験所で開かれた学術講演会で発表した。
瀬尾さんたちはソ連、欧州各国の汚染データに加えて、これまで“空白地域”だったポーランド、オーストリアなど7カ国の土壌試料を入手して分析した。その結果、放射性物質の地表沈着量は3000キロ圏内で1億1300万キュリー。放出量の中には3000キロ圏を越えて日本などへ届いた分もあるが、3000キロ圏の沈着量についてだけみてもラスムッセン報告を超える放出であることがわかった。
炉心にあった放射性元素の何%が放出されたかで事故規模を比較すると、表(単位は%)の通り瀬尾さんたちが計算した沈着量は同報告最大規模の放出量(カッコ内)よりかなり多い。セシウム、ストロンチウム、プルトニウムと、長寿命で人体に影響する元素が目立ち、表にはないがセリウムなどあまり放出されないと考えられた元素が相当量ある。
ラスムッセン報告が最大規模としてあげているのは加圧水型炉第2類型の事故で、安全系が働かず炉心が溶融、格納容器が破壊されて放射性物質が30分間にわたって大量に大気中に放出される想定。このあと炉心は床を溶かして沈んでいくので放出はゆっくり続くとした。チェルノブイリ事故では炉心の一部が吹き飛ぶ爆発がありながら、炉心が床に沈んでいかず、長期間、大量放出が続いた。
(朝日新聞 1987/03/25)