【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】

米のプルトニウム工場 核爆発の寸前に 操業停止命令

【ワシントン10日=浅海特派員】

アメリカ・エネルギー省は10日までに、ワシントン州リッチランドのハンフォード原子力センターの2つのプルトニウム生産工場に対し、無期限の操業停止を命じた。作業員のミスから、液体プルトニウムが許容量以上に貯蔵タンクにたまり、核分裂の連鎖反応によって核爆発を引き起こしかねない状況が、先月末に発生した事実を重視したため。10日付の米紙ワシントン・ポストが報じたもので、米政府所管の核施設に対する操業停止命令は初めて。


同センターは、アメリカの核兵器用プルトニウムの大半を製造する連邦政府の施設。この中では、ウラニウムの鉱石をいったん、液体プルトニウムに精製、さらに、固体プルトニウムに加工するが、先月29日、液体プルトニウムを一時的に貯蔵するタンクに、許容量以上の液体プルトニウムが流れ込む寸前、という事態が発生した。


これは、同タンクに、すでに、相当量の液体プルトニウムが貯蔵されているにもかかわらず、作業員が、バルブを締め忘れたため。


幸い、寸前になって、監督官が気づき、事故は未然に防止されたが、「きわめて、危険な状態だった」(同センターのスポークスマン、マイク・タルボット氏)ことは確か。事実、今回のミスは、エネルギー省が定めた5段階の規則違反で、5を「最も重大」とすれば、4に相当するもの。操業が再開されるまでには、最低1か月は要する見込み。


また、今回、事故が発生した工場は、原子炉そのものに直結してはいないが、エネルギー省は、事故直後、同センター内の原子炉を点検、安全性を確認している。
今回の事故は、作業員のミスが原因だっただけに、今後、原子力施設における労務管理のあり方などが、問題になるのは必至。ただ、日本の場合、在米科学関係筋は、「日本ではとても考えられないこと」と、語っている。


(読売新聞 1986/10/11)