【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】
西ベルリン 土から高濃度放射能 ソ連原発事故で汚染
ソ連のチェルノブイリ原発事故で同原発から約1000キロ離れた西ドイツ西ベルリンの表土は、日本の土の少なくとも50倍以上の放射能で汚染されていることを、学術研究用のサンプルとして日本国内に持ち込まれた土を分析した京大原子炉実験所(大阪府泉南部熊取町)の小出裕章助手(原子核工学)が14日、明らかにした。
西ドイツ当局は同事故による詳細な汚染データをほとんど発表しておらず、「緑の党」などが公表を迫っているが、ヨーロッパの土が日本に持ち込まれ、分析結果が出たのは初めて。この結果は来月、広島市で開かれる日本原水禁世界大会で発表されるとともに「緑の党」の関係者にも送られる。
分析の対象となった土は、先月16-27日、日本原水禁のメンバーとして東、西ドイツを訪問した和歌山県在住の男性(45)が、小出助手の依頼を受けて、西ベルリン市中心部の知人宅の庭などで採取し、ビニール袋に入れて持ち帰った115グラム(サンプル1)と325グラム(サンプル2)。
小出助手が、ガンマ線を測定するゲルマニウム半導体検出機にかけてこれらの土を分析。この結果、サンプル1の表土から検出された放射能は1キログラム当たりヨウ素131-6.78ベクレル▽セシウム134-57.3ベクレル▽同137-124ベクレルなど。サンプル2は1の半分程度だったが、両方の平均値は同実験所のある熊取町の土に比べ、50倍の放射能濃度を示しており、このうち、セシウム137を1平方メートル当たりの表面汚染密度に換算すると、2300-5700ベクレルに達することになるという。
さらに小出助手は、このデータを基に、ベルリン市民が長期的に浴びる被ばく線量を過去の核実験などによる被ばくデータを集積した国連科学委員会の算定方法に基づいて計算。
その結果、地表から直接受ける外部被ばくは23-61ミリレム▽この土地でできる農作物を食べ、飲料水を飲むなど経口による内部被ばくは11-29ミリレムに達した。
これを、アメリカ・カリフォルニア大名誉教授、ジョン・ゴフマン博士(医学、原子物理学)の「268人がそれぞれ1レムの放射能を被ばくすると、うち1人ががんによって死ぬ」という説にあてはめると、8000人から3000人に1人の割合でがん死に至る計算となった。
これは、セシウム137の土壌汚染に限定したもの。同助手は事故直後の被ばくやストロンチウム90など他の放射能による影響を考えると、「数倍のリスクを覚倍する必要がある」としている。
<ベクレル> 放射能の強さを示す単位。1ベクレルは27ピコ(ピコは1兆分の1)キュリー。
(毎日新聞 1986/07/15)