40代でアメリカに移住し、
英語教師をしているMayです。

今日は日曜日ですので、美術館の紹介をします。
まずは、留学生が大好きな観光地ニューヨークの美術館です。

マンハッタンのアッパー・イースト・サイドに静かに佇む美術館フリック・コレクション。メトロポリタン美術館に比べればかなり小規模ですが、一点一点の作品が美しい光を放ち、真珠を散りばめたような上品な美術館です。

この美術館の建物は、実業家だったヘンリー・フリック氏の邸宅を美術館仕様に改築したものです。そういう訳で、館内の至る所にかつての面影を垣間見ることができます。壁やドアノブの装飾、家具調度品など細部にまでこだわり抜いたフリック氏の完璧主義ぶりが伺えます。

展示作品は、フリック氏の個人コレクションです。ご自身が大層な目利きだったのか、良きアドバイザーがいたのか、有名画家の作品の中でも質の高いものが揃っています。

きっとフリック氏は、本当に芸術を愛する人だったのでしょう。名前に釣られて有名画家の作品を買ったのではなく、ご自身が気に入った良い作品を買ったのだろうな、と思わされます。

特に、ジョバンニ・ベッリーニの「荒野の聖フランシス」(1480) は必見です。ベッリーニの隣には、彼の工房から世に出たティツィアーノの肖像画もあります。この小さな美術館でヴェネツィア・ルネッサンスにも出会えるのは感動です。

エル・グレコやヴァン・ダイクなどのバロック絵画コレクションは展示数も多く見応えがあります。

エル・グレコの「神殿の清め」(1600頃)は、彼の作風がよく分かる躍動感のある絵です。巨匠レンブラントの肖像画は、一点ながら堂々とした存在感を放っています。

そして、フリック・コレクションの一番の売りであるフェルメールの作品3点。世界中に35点しかないフェルメールの作品中3点がここのあるのも驚きです。「兵士と笑う女」、「中断された音楽の稽古」、「婦人と召使」はどれもフェルメールの傑作です。

また、ロココ絵画コレクションも充実しています。宮廷画家の巨匠フランソワ・ブーシェとジャン・フラゴナールには、それぞれ特別室があてがわれています。

ブーシェの作品が壁を覆うブーシェの間は、一歩足を踏み入れた途端に18世紀のフランス宮廷にタイムトラベルしたような感覚になります。内装も調度品も全てがフランス宮廷の雰囲気を再現しています。

そして、フラゴナール・ルームは、フラゴナールの絵画で壁全体を覆うべく大改築されたそうです。「愛のなりゆき」に囲まれて、ロココ世界に浸れる空間は貴重です。フリック氏の宮廷への強い憧れが伝わってくる部屋でした。

フランス印象派の作品も数点ながら楽しめます。館内に入ってすぐ右手にある大階段の下には、ルノワールが清楚に飾ってあり、鑑賞者を出迎えてくれます。

ターナーやコンスタブルなどのイギリス絵画も素敵です。私はよく分かりませんが、世界に数点しかない陶磁器もあるそうです。

フリック・コレクションでは、不思議な感覚を覚えました。公の美術館に行くと、私は作品や作者と勝手な空想でお話をしながら絵を観ます。でもこの美術館では、フリック氏も会話に入ってきます。「あ、この絵ね。いいでしょう。この絵との出会いはね…」と語ってくれるような気がします。フリック氏の美術史の造形の深さも伝わってきます。

この美術館の作品たちは、フリック氏からそれぞれの価値を見出され、その庇護の元で幸せな運命にあるのだなと思いました。

「素敵な安住の地に来れて良かったね」と心が温まる美術館でした。