小説「想い出あずかります」 | 小川村塾ブログ

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 TBSラジオの朝の番組、「森本毅郎スタンバイ」のブックナビというコーナーで、5/26(木)に紹介された本が面白そうだったので、読んでみたいと思った。
 そこで、いつも行く書店に週末になって行ってみると置いてない。

 周辺の書店で探してみても置いてない。
 月曜日に、ネットで購入しようとすると、売り切れで、いつ出荷されるか分からない。
 そんな状態で、先週の土曜日に都心の大型書店で、やっと購入して読むことができた。
 その本が、「想い出あずかります」新潮社・吉野万理子著。

 海辺の岬の崖の下に魔法使いが住んでいる。
 その場所で、魔法使いは質屋をしている。
 預かる物は決まっている。
 20歳までの子供たちの想い出だ。
 子供の想い出を質草にしている。

 お金が欲しい子供は、自分の想い出を魔法使いに預けて、その代価として、お金をもらう。
 預けた想い出は、お金を返せば、ちゃんと元どおり返してもらうことができる。
 質に入れることができるのも、預けた想い出を返してもらうことができるのも、20歳まで。
 20歳を過ぎると、魔法使いのことも、預けたままの想い出も、記憶からなくなってしまう。

 物語は、主人公の里華が中学生から20歳になるまでの間に起こる事が、魔法使いとの交流を軸にして描かれている。

 映画「トイストーリー3」を観て感動した人は、この本を読んでも感動できるはず。
 アンディとウッディたちとの別れの時のように、なぜか、ちょっと寂しく、そして心あたたまる読後感になる。

 大人になることは、多くの経験を通して成長していくことだ。
 けれど、お気に入りの物とも決別しなければならないことでもある。
 そんな気持ちを抱かせる。

 もう遠い昔になってしまった子供の頃、自分は何を大切にしていたのだろう。
 そして、大人になるために、その大切にしていた物はどうしたのだろう。
 ちょっと考えてしまう。

 物語の最後のところの話は特に心を打つ。
 読んで、気持ちがちょっと切なくなって、そして心あたたまる物語だ。
 ページ数も251ページで、あっという間に読めてしまう。

 軽い読み物だけれど、なぜか心に残る。
 子供の頃を忘れてしまった大人にお薦めの本だ。