フランスで有名な日本人と言えば、おそらく一番に来るのがビートたけしこと北野武。
カンヌ映画祭の常連であり、コメディアンであり映画監督でもある
というマルチなところが人気の根本的なところだろう。
そして、先日発売された、ビートたけしの名で書き下ろした恋愛小説
『アナログ』が話題を呼んでいる。
マルチが、さらに増えたというところでもある。
フランス人は、歴史的に見てもキワモノが好きである。
常人ではない人物たちを好むところがある。
かつて話題になったタブロイド漫画誌『シャーリー・エブド』だが、
襲撃されて12人の死者が出た時に何十万人もの人々が
"Je suis Charlie" と『シャーリー・エブド』を支持するデモを行なった。
もちろん、この意味としては「言論の自由を守る戦い」としてのデモではあるが、
変な漫画を描く”キワモノ”が、とりわけ好きなところもある。
読者はそれほど多くはないが、一癖ある人間を好む志向がある。
19世紀のフランス社会の生き証人のようなエドモン・ゴンクール、
彼はゴンクール賞というフランス最大の文学賞の名前で知られている。
その彼の『ゴンクール日記』を読んでいたところ、
フランス人の”キワモノ”好きな性向を揶揄するような文を見つけた。
彼が生きた19世紀に、もてはやされていたのはボードレール、ヴィリエ・ド・リラダン、
ヴェルレーヌの3人。これについて一言、小言のように言っているくだりがある。
「今の若者は上記の三人を神のように信奉している。
だが、一人はサディスティックな放浪者(ボエーム)であり、一人はアル中患者、
一人は人殺しもしかねぬ男色者ではないか」
上記の三人が、そのままの人物評ということになる。
つまり、三人ともに”キワモノ”だ、と声高に語っている。
歴史的にも、そんな”キワモノ”趣味の性向があるようだ。
そうなれば、
ビートたけしがフランスで好まれるのも当然と言えば当然か...