九曲筏下り
朝
食は前の日に買ったパンで済ませる。今日は九曲の筏下りだ。フロントで聞くと今日は筏が出るという。宿の前からオート三輪に乗り、筏下りの起点である星村
に行く。星村につくと、大勢の人が筏乗り場で筏を待っている。運転手に聞くとあれは団体用だから、個人客はもう少し上流に行かなければいけないという。車
から降りるとおばさんが2人近寄ってきて、「編排」をせよと言う。こちらは「編排」なるものがなんだか分からないから、また客引きが来たと思って逃げよう
とするが、おばさんたちはしつこく追ってくる。運転手が「編排」をしないと筏に乗れないというので、おばさんの話をまじめに聞く。
つまりこうなのだ。筏は一人一人で乗るのではなく、一艘一艘で借りる。一艘には5人から6人乗れ、料金は410元である。もし我々が一艘借りるとすると
お一人様205元だが、5人で乗れば82元でよい(この日は増水のため5人乗りだった)。おばさんたちは個人客が安くのれるよう、客を組み合わせることを
商売にしていたのである。もちろん一人につき10元の手数料を取る。悪く考えれば、亭主は船頭で稼ぎ、女房は「編排」で稼ぐというわけだ。なかなかうまく
できたシステムではある。
事情がわかったので、おばさんに「編排」を頼む。おばさんはちょっと待てと言って消えてしまい、待つこと30分。相方が見つかったという。相方は上饒の
女子高校生三人、国慶節休みを利用して遊びに来たらしい。それにしても今時の高校生は豪勢なものだ。この旅行で親の月収に匹敵する金を使うのだから。
船着場で待つこと更に30分、ついに順番が来た。筏は竹製で、長さは6m、幅は70cmくらいで、竹を7本ほど結び合わせてある。これから乗る筏は5人
乗りなのでそれが横に二つ繋いであり、上に竹の椅子が5脚固定されている。船頭は50がらみ。竿を巧みに操って筏を漕ぎ出す。
九曲は曲がり角が九つあることから付けられた名前である。一曲が武夷宮のすぐ脇にあり、二曲、三曲と上流に向って数が増える。星村から少し下ったところ
が九曲で、ここを過ぎると早瀬になる。今日は水かさが多いので船足が速い。八曲の辺りには碾臼峰や猿人岩がある。七曲で大きく右に曲がる。両岸には赤い崖
が迫って緑の水との対比が美しい。
六曲から五曲の辺りは雲窩風景区に接していて、岩峰が目の前に迫り、滝や岩壁なども見えて九曲の中で一番きれいなところだ。船頭は両岸の名所を一つ一つ
説明し、舟歌なども歌ってくれる。標準語をきちんとしゃべってくれるのでわかりやすい。途中、武夷山がどんなに素晴らしいか述べ立て、それが証拠に外国の
お客さんまできているだろうと高校生に話しかける。高校生は、「え、この人たち外国人なの」と初めて気がついた様子。私は同行者に通訳してやっていたのだ
が、船頭はそれを日本語と聞き、この子達はそれをどこかの方言か何かときいていたのであろう。この船頭、なかなかたいしたものだ。
たいしたものと言えば、この娘たちもたいしたものだ。玉女峰を過ぎて二曲辺りに来たら、船頭さんがとても親切にしてくれたからチップを出したいので協力
してください、1人10元でどうですかと持ちかけてきた。きゃっきゃ、きゃっきゃと戯れているばかりかと思ったら、日本の高校生など思いつきもしない浮世
の仁義を心得ているのだ。
今日は連日の雨による増水で流れが速く、川下りは1時間ちょっとで終わってしまった。普段だと2時間近くかかるそうだから損をしたような気もするが、流
れが速い分だけ軽いスリルを楽しむことができた。筏を降りた波止場のすぐ下流には小さな段差があり、筏はそこでちょっとホップする。船頭たちはそこでひょ
いと跳んで粋なところを見せてくれる。一番若い船頭は17、8のように見えた。
雲窩風景区
昼
は宿にもどり、朝の残りを食べる。2時近くにミニバンタクシーで雲窩風景区に行く。タクシーを下り、橋を渡り、晒布岩と接筍岩の間に入っていくと、岩壁に
囲まれた茶洞という広場に出る。道教で人間世界から離れた理想的な場所を洞天というが、これはまさに洞天、そこには外界とは隔絶された全くの別世界があ
る。
茶洞の左側、つまり晒布岩の裏側は天遊峰に続く岩尾根で、泉の上には滝がかかっている。右に上れば接筍岩の裏手になる玉華峰だが、我々は左の天遊峰に登
る。岩尾根の登りは高度が上がるに連れて六曲、七曲、八曲が見えてくる。景色はすこぶるよい。天遊峰の頂上には天遊観がある。宋美齢の別荘があったところ
だという。道観の中は特に変わったものはない。ここからは右にも左にも河の流れが見え、眼下には茶洞が見える。
観の前には蛇屋がいて、各種の毒蛇を売っている。これをと指定すると瓶に入れて酒を注いでくれる。持って帰って精力剤にするのである。値段はかなり高
く、一番安いので80元、一番高い緑色の蛇は300元以上した。
天遊峰から桃源洞を目指す。ところどころに道標があるが、沢を渡って戻るように左へ曲がるところには道標がなかったため、沢を渡らずに真っ直ぐ行ってし
まった。両側の崖が迫り、道が細くなって雑草が生い茂って来たのでこれは道を間違えたと察して戻ったが、途中、間違って入ってくる人と何回もすれ違った。
沢を渡るところに道標がないのは問題だ。結局、時間の関係で桃源洞へは行かずに七曲の辺りに出て、川沿いに風景区の門に戻った。
風景区からミニバンバスに乗って宿まで戻る。預けてあった荷物を引取り、フロントの控室を借りて雨に濡れた衣服を着替える。バスに乗り休暇村に出て夕食
にする。昨日とは別の店で土地の特産を食べる。おいしい。食後、福州行きの寝台バスに乗るためにバスで汽車站に行く。