呪われし踊り子
呪われし踊り子
黎明の頃、古城に小さな明かりがこぼれ落ちた。湖の上を柔らかな霧がゆっくりと消えてゆく。
主を亡くした古城は、神々しさと儚さをその深い藍色をした湖のキャンバスに映し出される。
一九二〇年。秋。セーヌ川のほとりの画廊にたくさんの画家達がパトロンを求めてやってくる。主もその一人なのか?
古城の最上階にその絵が存在する。
同じ踊り子が二枚と年老いた主らしき絵の合計三枚。誰の目にも触れられず、そこに眠る。
何処から噂を聞いたのか?
一人は画商のような身なり、もう一人は、美術館の館長らしき者が、まだ夜明けだと言うのに、この古城の最上階まで登ってきた。
「いやあ、この螺旋階段は、珍しいですな。」
「噂に聞いていましたが、ええ、そうです。」
「二重構造の螺旋階段ですよ。」「二重の螺旋階段は、最上階まで塔のような構造になっており。」「当時は珍しい設計で、世の人々が興味を持った城のようですよ。」「しかし、見事ですな。」
最上階に着くと、見事な大鏡がある。二人は、そこでネクタイを整えた。
大鏡には、百合の家紋が彫刻されてあった。
「それにしても扉がたくさんありますな。」
そう画商が言うと館長は、「一番奥の大きな扉ですよ。さあ、行きましょう。」
二人でその重厚な扉を開けると壁一面が深紅の上等な壁紙でそこに三枚の絵が飾られていた。二人は、燭台の炎で頭上より上辺りを照らすと。
大きなパニエ型のシャンデリアの光が鈍く照らされた。
天井には、神曲の地獄と天国が描かれている。
「見事ですな。」
「部屋に見とれていても仕方ない。」
「さっさと済ませて、帰りましょう。」
壁の踊り子の絵、一枚は黒い額縁、もう一枚は金の額縁である。
二人は、何度もその二枚の絵を見比べて、結論が出ない。
取り敢えず2枚の絵を絹の包布で包んで持ち帰ることにしました。
続く