三友居 】といえば、もともと古都 京都の【仕出し専門 】の有名店。 関東では大昔、吉祥寺の地に会席料理専門店があり、まだ近鉄百貨店がハアハア、ゼエゼエ、持ちこたえていたころ、そこの5階だか6階のグルメ階に存在した。


アンチ・ミシュラン!アンチ・ハンチントン!の食べ歩きダイアリー

(上はありし日の近鉄)


そら恐ろしいお店だった。 昼、夜関係なく、コースの値段は5000円前後から一万円未満(一番高くて8000円だったと記憶)。 料理につかわれる基本のダシは、薄味にもかかわらず非常に味わい深い。 また、最近の創作料理のような会席とはまったく違った。 一つの素材にたいし、その素材の味を最大限に引き出せる必要最低限の調理過程をほどこす。 最高の技術をそそいで。


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(海老芋の揚げ物なんて絶品でした)


最初の一品、2品食べただけで、思わずホロリ。 ここと比べれば、都内にごまんとある馬鹿高い有名店は、上品だが、それだけによけいたちが悪いボッタクリバーでしかなかった。 


これが京都の実力なのか?!、驚愕に身を振るわせていたのもつかの間。 近鉄百貨店、吉祥寺支店が借金の重みでポッシャリつぶれ、それにともない“三友居”も閉店。 移転したら連絡しますね、という一言を最後に音信不通。 以来、もうあの味は京都に行かないと味わえないんだろうな。。。。と思っていたら、なんと【高輪台にて再開したという 】。


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早速恒例の食べログで、【三友居 】チェック。 口コミは4件のみだが、全体的に評価は高い。 とりあえず小手調べということで、昼にお邪魔することにしたが。。。。。お昼は4700円のコースのみで、今の季節だと(2010年9月)【 】尽くしだという。 【高輪台の地価  】などを考えると、昼とはいえ鱧尽くしで4700円というのは少々怖い。。。。


ちなみに以前、何度かお邪魔させていただいた吉祥寺店では、周りのお客はベテランばかりであった。 つまり、人生というフルマラソンを完走寸前、といったおもむきの方々ばかりである。 今度はどうか?! はたして、のれんをくぐった先に広がった光景に、私は人知れずうめいた。


まったく、変わっていない。。。。。! 小奇麗で、割烹料亭というよりはしゃれた喫茶店風の店内を埋める人影は、激動の昭和の生き証人たちであった。


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。。。。それはいい。 メシさえ旨ければ。 食べログでもツッコまれていたが、給士をしてくださる女性のかたは、和服ではなくデニム地っぽいワンピース姿。 なんだか、こじゃれた養老院におじいちゃんのお見舞いしをに来た気分。 よけいなお世話とは思うが、客筋のわりにはバリアフリーの配慮が足らないように思われた。 で、料理のほうなんですが。。。。。。


もはや料理の紹介など不要、そう思わざるを得ないレベルであった。 基本のダシってこんなもんだったっけ。。。。。?! 私の舌が肥えたのか? それとも鈍化したのか? もしくは、味が落ちた? 決して不味くはないし美味しいのだが、以前のように他店で味わえない味ではない。


なによりも悲しかったのは鱧。 とても水っぽく、そして身に味がない。 自宅で食べる鱧のほうが、よっぽどウマイ。 値段を考えれば冷凍ものを使ってくるのは予想できたが、それにしても。。。。。


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(酷かったものの筆頭:鱧寿司)


ちなみに関東では、関西ほどはなじみがないかもしれない鱧。 確かに一般の魚に比べれば高いですが、たとえば神戸や明石などにあるちゃんとした魚屋さんに頼めば、3000~4000円(プラス送料)で、立派で美味しい鱧を東京までクール便で送ってくれる。 うちは千葉だが。 大体この値段で、2~3人で鱧鍋が十分楽しめる量。 便利な時代になったもので、ようするに、へたな和食レストランで高い金払ってまずい鱧を食す必要はないわけである。


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ひどい鱧を食わされる中で、なぜか美味しかったのが鱧とマツタケの土瓶蒸し、ではなく平べったい【タジン鍋 】のようなもので炊く、あれである(名前失念。。。。)。 そしてもう一品。 子持ち鮎の揚げ物は、食べにくい鮎の頭までサックリ食べられるように揚げられてあった、以外な伏兵であった。 一方、いただいた冷酒は、温度が室温にちかづくにつれて、ねちっこい甘味が邪魔してくる一品。。。。。。


それにしても。。である。 高輪台で4700JY(Japanese Yen)というお値段のわりに、品数はやたら多い。 のわりに、一品一品のレベルは以前ほど高いとはいえず。。。 値段をすえおくかわりに品数を減らし、質で勝負することは出来なかったのだろうか。。。。


いずれにしてももはや再訪の必要なし、との結論にいたった私は、肩を落として店を出た。


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数年前、ワタシは英国の北のド田舎の大学にて、土着の文化人類学アカデミズムどもからのサイコアタック(精神的いじめ)で心身を病んでおりました。 現地の院で学んでいる数少ない日本人からお声がかかったのは、ちょうどそのころ。 発狂でもしようかと味噌汁すすりながら頭をかかえていたころでした。


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文系で頑張っている日本人の研究会みたいなものを作るので、ご一緒にどうですか?、と。


長幼の序、丁寧語に謙譲語、控えめな付き合い、すべてがメンド臭くて仕様がないワタシです。 北の前にいたマンチェスターでは日本人との付き合いはつとめて回避。 北の大地でも同様です。 なんで今頃、と思いましたが、現地の友人で比較的仲の良かった日本と英国、双方の文化に深刻に汚染された【ミュータント 】から諭され、とりあえずお試しで入ることに(ちなみに彼は年下です)。


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(モウイパ~イ:訳 もう一杯 映画見た人ならわかるよねにこ


ちなみに研究会の活動は、飲み食い及びサッカーを非常に重視するなど予想外の充実ぶりをみせ、ワタシもおおいにフラストレーションを発散させたものでした。 そして、いいのか悪いのか。 その腐れ縁は細々を続いており、博士号論文完了寸前の文豪氏(仮名)が急遽来日。 ラストスパート前の腹ごしらえで、メシウマ! (訳:ウマイめしが食いたい)というわけで、東京で会うことに。


前から気になっていたから、という理由でメンバーの一人、ルッチ(仮名)が、本郷のお洒落な焼き鳥店:【E mma 】での会食を提案。 ちなみに主賓である文豪氏は埼玉から。 ワタシは千葉の船橋から。 もう一人、ワタシが呼んだ友人は、東京の人形町であるからともかく、ルッチの現在のご自宅は本郷です。


ルッチ。。。。。      恐ろしい子。。。。。!


いずれにせよ、文豪氏がそれでよしとするなら、異論なし。 早速、わたしは【“Emma”の食べログでのレビュー 】を一通り流し読みし、間髪いれずルッチに問い合わせました。 今回の店の選択ははたして最適なりや?、と。


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4件しかないレビューは男女半々で、いずれも高得点なるも、各レビュワーの他店のレビューを見るとラーメン屋とケーキ屋ばかり。 なんだか文章にも熱がない。 女性は雰囲気でメシを食う!、という偏見で頭がいっぱいのワタシには、“Emmaはとってもお洒落”、という事実も不吉の象徴にうつりました。


間接的、直接的表現をもちい何度もルッチの【翻意 】をうながすも、のれんに腕押し。 そのたびに、たくみなルッチ理論で、なぜか、やっぱり“Emma”しかないよね、という結論にいたる。 そういったやり取りを一週間以上続けた結果、ワタシの反抗心はついに枯れはて、おとなしく“Emma”でメシをくうことになったのです。


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不味かったらひたすら酒でもあおっていよう。 結果的に、ご主人とルッチに非常に失礼だったこのやさぐれ感は、一本目の鳥わさによって、コッパ微塵に砕かれることになります。

久しぶりでめんどくさくなっているので、要点だけを適当にまとめます。 やっぱりあいだ開けちゃだめなんだなあ、こういうの。


現在(2010年9月)行っているかどうかは、分かりませんが女性客にだけライチ酒のサービスがありました。 うっすらと上品に輝く琥珀色で満たされたグラスを、これ見よがしに仰ぐ村田氏。 我々はただただヨダレを垂れ流しながら、眺めていることしか出来ませんでした。 氏によると、美味しかったそうです。


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それはともかく、料理です。 先発で来たのは、揚げ鳥の甘酢ソースかけ。 いつもありがたく盗用させていただいている食べログの写真コーナーに(っていうか、ほとんどランチメニューと麻婆ばかりじゃないじゃないか。。。)ないので、実物をお見せすることは出来ませんが、なかなか出色の味。 おそらくここでしか食べられない代物でしょう。


鳥の衣は極うす(ゴムの宣伝ではない)。 表面はウマそうなこげ茶色いろで、油っぽさは甘酢ソースのお酢も手伝って、ほぼゼロ。 ネギ、セロリ(たしか)、香菜(シャンツァイ)、それに輪切りの唐辛子と和えてある甘酢ソースは、お酢嫌い、そして甘酢嫌いの人でもすんなり受け入れられそうに品がよく、プラスアルファで香りに技ありです。 正体は、十中八九スターアニス、もしくは【八角 】と呼ばれる、中華の香辛料の一つ。 【肉ものの煮物料理 】(チャーシュー含む)、によく使われますね。



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香りだけを加える方法として、すりがねなどでおろしてその粉を加える、というものが一般的だと思います。 しかし、香水嫌いのワタシが思わず目を見張ってしまう上品さがそれで出るのか。 この店の料理を特徴づける一つの技といっていいでしょう。 この揚げ鳥は、全体的に非常にサッパリな上に塩味もかなり控えめ。 しかし、大量の輪切り生唐辛子の混入により、非常~に鮮烈な辛味を持っており、あとで食べた麻婆豆腐が辛く感じなくなるほどです。 日本ではなかなか味わえない一品ではありますが、覚悟して注文しましょう。


二番手は、炒飯。 この炒飯なんですが、これってホントに炒めてあるの?、っと疑ってしまうくらいアッサリしている炒飯。 あいかわらず、塩味もアッサリです。


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これはこれで珍しいのですが、オレは中華のあのパラパラ、シッカリ味付け炒飯がくいてえんだよ!?、という方にはまったくお勧めできない一品。 かくいうワタシも、どちらかというとそっち派なんだな。。。。。


3番手には青菜の炒め物。 これも写真なし。 ちなみにこの一品は、結構油でコッテリなう(え~と、この表現いま流行ってるんですよね?)。 刻みニンニクタップリなうえに、塩味もシッカりついていて、酒飲みのハートに直球ど真ん中で突き刺さるシロモノ。 空芯菜(このときはね)の炒め具合もシャッキリパリパリ。


そして、問題の麻婆に汁なし坦々。 基本的に食べログの写真はこればかり。。。。

まずは麻婆豆腐。 辛さは3段階設定で真ん中の普通。 食べログデビューでは、盛んにマー(麻)が効いてるぜ~!!、と叫んでいらっしゃる方が大勢いらっしゃいますが、騙されないように。


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ここのは‘麻’で食わせる麻婆ではありません。 基本は、古きよき日の悪の巣窟、砂防会館ななめ向かいの【四川飯店 】の麻婆に似ていますが、こちらよりもシビれるマーは控えめ(言うまでもなく、【池袋のアレ 】とは比較にならない)。 こちらの麻婆を、巴蜀オリジナルに仕立てているのは、おそらくお持ち帰りもできる巴蜀オリジナルの日本で言う‘食べるラー油’。 舌の上でプルプル踊るななめらか豆腐に、旨味の挽肉がタップリ、旨味と辛味をタップリ含んだ油に加え、例の食べラー油がたまらない香りを半径3メートルを超える周囲に満ち満ちる。。。。。


基本的にこちらの麻婆は、どこかにものすごく癖のあるシロノモ、というわけではなく、ある意味食べやすい一品。 一方で巴蜀でしか食べられない独自の味と香りから、個人的に何回でも食べたくなる一品です。


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そして、汁なし坦々。 こちらの坦々は見た目とは裏腹にそんなに辛くなく、【芝麻醤(チーマージャン) 】のふくよかなコクと爽やかな香りで、細いコシのある麺を食べさせる一品。 芝麻醤と絶妙に絡む辛味ソースも絶品で、ちなみにこの一品にも例の八角のエレガントな香りが(ただし、昼坦々のレビューには一切書いてないので、夜のみか。。。?)。 ここの坦々も、個人的に何回でも食べたい坦々。


と、言うわけで【巴蜀 】でした。 一品一品が異なる個性をもっているため、注文した品が好みに合わないと、なんだこの店?!、というオチに。 なので、自分の好みをお店の人に話した上で、慎重にオーダーしたいですね。