毎度のことながら、年末なのに2月号という違和感。今号の特集は「親子で愉しむジュヴナイル・ミステリ」です。内容のほうはまずまずでした。
表紙のイラストは今回、赤が基調になっているので、むしろ今号のほうがリニューアル第1号みたいなイメージになっています。1月号では品のない文字づかいが目に付きましたけれど、今回はレイアウトが少しスッキリして、野暮ったさが薄くなりました。ただ、こうしてみるとイラストのレトロ調なムードが、少し古くさい雑誌のような印象も醸し出しています。これはこれでアリなのかもしれません。編集部の方針に沿ったものなのかどうかはわかりませんけれど。
目次ページをめくると、去年ロシアで暗殺されたアレクサンドル・リトビネンコの病床での写真が目に飛び込んできてビックリしました。ミステリマガジンにノンフィクションの特集かよ、と思ったんですが、これは早川書房が出した『リトビネンコ暗殺』が映画化されることに連動した企画ページでした。ネクラーソフ監督へのインタヴューを中心とした構成になっていて、なかなか面白く読めました。
前回から始まった作家のインタヴューページ、「迷宮解体新書」の第2回ゲストは門井慶喜。いま一番興味のある作家の1人なので、私にとってはタイミングの良い企画です。「私の本棚」のゲストは松坂健。3万冊ぐらいという蔵書の量は圧倒的で、これでも実家を壊す際に数千冊の日本ミステリを捨てたとおっしゃってるのが驚きでした。そんなコレクションなのに、ポケミス全冊制覇はまだとのこと。いやいや、それでも羨ましいですねえ。
特集にくくられた創作は全部で5つ。この1年ぐらいの中で、最も多い掲載本数なんじゃないでしょうか。まだこれでも、最盛期に比べると少ないんですけれど。最初に置かれているのは、ジェームズ・ホールディングがエラリイ・クイーン・ジュニアの名義で書いた(作者については異説あり)、ジュヴナイル長篇『紫の鳥の秘密』。もっとも、これは3回の分載になるらしく、今回のは「前篇」となっています。このほか、ロバート・アーサーの『五つの不吉な盗みの謎』、エドワード・D・ホックの『モンキー・パズル』と『消えたサファイア』、池井戸潤の『幽霊ジェームズ』の4短篇が掲載されています。
これらに加えて、「上橋菜穂子の世界で遊ぶ」と題されたインタヴュー記事、はやみねかおるの「創作で必要なことは、だいたい教室で学んだ」、北上次郎の「すべての謎が解ける快感を見よ」、松坂健の「幻のジュヴナイルミステリを探って」の3本のエッセイ、森英俊による解説記事、講談社の「ミステリーランド」と理論社の「ミステリーYA!」の両シリーズを紹介した記事などがあり、久々に充実した特集ページになっていると言えるでしょう。
『紫の鳥の秘密』は、全部で9篇書かれている「ジュナの冒険シリーズ」の中で、唯一未訳だったもの。ジュナ少年が探偵役のパズラー仕立てのようですが、後篇まで掲載されてから一気に読むことにします。作者とされるジェームズ・ホールディングは「ヒッチコックマガジン」の常連作家だった人です。
『五つの不吉な盗みの謎』は、『五十一番目の密室』で知られるロバート・アーサーが、アルフレッド・ヒッチコック名義で書いたジュヴナイル短篇集からの1篇。これは予想外の収穫でした。サーカスの一座を舞台に、大男の靴や小男の杖など、奇妙なものばかりが次々に盗まれていくという事件が描かれます。犯人の名前が伏せられたまま、代名詞だけで4ページ以上も引っ張るテクニックはさすが。「ヒッチコック劇場」よろしく、冒頭や途中に何度もヒッチコックのおしゃべりが挿入され、それが読者への挑戦も兼ねているという、凝った構成です。
『モンキー・パズル』と『消えたサファイア』の2篇は、数多いシリーズ・キャラを持っていることでも有名な、エドワード・D・ホックの持ち駒の1人、少年探偵トミー・プレストンものの初紹介作品。トミーは13歳の中学生で、1歳上の姉がおり、父親は動物園で飼育係をしています。そんなわけで、2篇とも動物がらみのネタなんですが、プロットの作り方は完全に大人向け作品と同じレヴェルにあり、しかも囲みで「読者への挑戦」が挿入されているというスタイルになっています。
『モンキー・パズル』のほうは、霊長類の研究所で女性研究員が何者かに襲われ、貴重な研究資料が盗まれてしまう事件を扱ったフーダニット。シンボルが描かれたパネルを使えば人間と簡単な会話ができるチンパンジーが唯一の目撃者で、そのチンパンジーの行動の謎を解き明かすくだりは見事です。『消えたサファイア』のほうは、高校で開催されている科学祭に展示するためにトミー少年が会場に持ち込んだ蛇が逃げ出し、その騒ぎの中で高価なサファイアが盗まれてしまうという事件。密室状況から誰がどうやって宝石が持ち出したのかが謎の中心です。
池井戸潤の『幽霊ジェームズ』は、横浜の古い洋館に引っ越した大学教授一家の娘が、そこに住みついている陽気なアメリカ人の幽霊と出会い、彼を悩ませている過去の事件の謎を解決しようと奮闘する話。ミステリというよりは、ライトなゴーストストーリーという感じです。今回、この短篇が掲載されたためなのか、池井戸氏の長篇連載『藤村巴里日記』はお休みになっています。おまけに山田正紀の『ファイナル・オペラ』も休載しているので、それがこの充実した特集ページにつながったのだと思うと、少々複雑な気もします。
『獣の奏者』(講談社)が人気の上橋菜穂子へのインタヴューは非常に面白いものになっていました。オールタイムベスト3の作家を訊かれて、ローズマリー・サトクリフ、J・R・R・トールキンを挙げた次が、何と藤沢周平で、さらに次点がディック・フランシスだというのにビックリしました。上橋さんいわく、「他にどうしても読みたいものがなくなってしまったときに、助けてくれって手が出る」のが藤沢やフランシスだとのこと。
今号では他に創作として、真梨幸子の『ゴールデン・アップル』という短篇が掲載されています。これは不定期連載“ふたり狂い”の第5回なんですが、前回の掲載は半年も前である上、あまり面白いと思わなかったので、正直なところピンと来ませんでした。この短篇、冒頭に「ゴールデン・アップル」という飲料のことが都市伝説として書かれているんですが、私も30年くらい前、実際に何度も飲んだことがありますから、都市伝説などではないと思うんですが……。
リニューアル後の目玉企画として始まった全4回の座談会、架空の「新・世界ミステリ全集」を立ちあげるというコーナーは、第2回目にしてもうグダグダな感じになってしまいました。マイクル・クライトンやロビン・クックを入れることを提案した羽田詩津子に対し、池上冬樹が「エンターテインメント全集なら入れてもいいけど」などと発言しているんですが、それならスティーヴン・キングやディーン・クーンツだってミステリじゃないだろうに、と思ってしまいました。
私にも経験があるのでわかりますが、雑誌のリニューアルというのは非常にエネルギーが必要な作業なので、直後の号というのはたいてい、目の行き届かない部分が出てきます。前号のような誤植ボロボロということはありませんでしたから、その意味では、2号目にしてある程度の落ち着きが出てきたのかもしれません。今後は、より上を目指して編集していって欲しいものです。あ、それとあの超くだらない「殺人占い」のページは、とっととやめてしまいませんか、編集部のみなさま。
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