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就活開始が早すぎたなんて『ない』
①素直であることが大事
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■就活に「早すぎ」はない
今回から8回シリーズで、これから就職活動(以下、就活)に臨む学生さんがいま何をすべきかということについて書いていきます。3年生になると、「来年のいまごろは就活かー」という話題も出てくるでしょう。しかし、何をすべきか、何をするか・・・という実のある話になることは少なく、さらに、実際に何かを始める学生はいっそう少ないのが実状です。そんな皆さんにとって「気づき」になるようなものを提供したいと思い、執筆することにしました。
シリーズタイトルは、「就活開始が早すぎたなんて『ない』」です。著者が就活をした時期を含め10年間にわたって就活生をみてきました。志望企業に内定を果たす学生がいる反面、後悔して就活を終える学生を見てきました。また、おととしには就活本を出版しましたが、執筆の過程で私が指導したことのない内定者のお話も多く聴きました。
志望企業に内定した学生でも、「ギリギリで対策や準備が間に合いました」と話す人がいます。
志望企業にご縁がなかった学生の多くは、「就活を始めたのが遅かった」と話します。
しかし、誰一人として「就活を始めるのが早すぎた」と話した学生はいませんでした。
著者は、大学1年春にいわゆる「就職予備校」のようなものに2か月通い、就活を開始しました。大学2年時からは志望業界でアルバイトを経験、OBOGにも早くから話を聴いていました。それでも、志望業界の試験では苦戦しました。内定はいただくことができたものの、「滑り込みセーフ」で準備が間に合ったにすぎないと思っています。
■2012の就活、成功した人間の共通点
早すぎることはないということを繰り返しても意味がありませんので、今シーズンの就活をもとに説明しましょう。今シーズン、私が開く「就活ゼミ」には、全国から様々な方がいらっしゃいました。なかには、名古屋から3回連続で通ってくれた学生もいましたし、下関から来た学生もいました。この場を借りて御礼を申し上げます。
さて、見ず知らずの社会人が開くセミナーに参加するような意欲的な学生であっても、就活では明暗が分かれました。その「分水嶺」、つまり、志望企業や志望業界から内々定をいただく学生と、そうでない学生が出てしまうのです。これは、どんな就活支援団体でも有り得ることです。「予備校に通ったから必ず志望大学にいけるわけではない」といえば、わかるでしょうか。
その分水嶺になっているのは、非常にシンプルなことでした。
1.素直である
2.自分の足で稼ぐ
3.油断しない
ちなみに、就活ゼミが支援する際に心がけているのは「裏技や秘密といった情報に惑わされず、社会に出るための本質を理解した学生を育てる」ということです。インターネット上に溢れる情報には、学生の目をひくために「裏技」「秘密」「誰もが知らない」といった言葉で虚栄心を煽るものが少なくありません。しかし、私たちはコツコツと学生に向き合って見つけた「基礎」こそ大事にしたい。当たり前のことを言っているようで、それを愚直に追求し、学生に伝え、ともに成長していくことを大切にしています。だからこそ、誰もが思いつくような3つの共通点を、胸を張って説明しようと思います。
■素直であるということ
まず「素直である」ということです。私も30そこそこ、人間性も成熟していませんので、これまでは人柄に関する評価を有為な学生の指標として説明するのは避けてきました。しかし、やはりよく見ていくと何よりもこれは大きいなと思うので僭越ながら言わせていただきます。
「素直であれ」と、言うは簡単ですが行動するのは非常に難しいことです。志望度の高い企業・業界、例えば女子学生に非常に人気の高いオリエンタルランドを例にとってみたいと思います。エントリーシートを書いている学生に「昔からミッキーが好きって言われても、そんな学生は“ごまん”といるんだがね」とアドバイスしたとき、失敗する学生はムッとします。しかし、成功する学生は「どこが悪いのか教えてください」と、教えを請うことができます。思いが強い分、盲目的に企業を好きになてしまうのでしょうが、これは非常に危ない。企業が欲しい人材の要件は、会社や会社がプロデュースするキャラクターへの愛の深さではなく、そういったものを活用して「いかに稼ぐか」を考えられることです。そうなってくると、企業やキャラクターへの「愛」は、むしろ足かせになることすらあるのです。
アドバイスを素直に受け入れること、それは志望動機だけではなく自分自信をアピールする際にもいえることです。就活の面接では、「自己紹介をしてください」と言われることが多く、その「自己紹介」は自分が企業にいかに貢献できる人材かを効果的にアピールする場になってきます。リーダー経験の多い学生にいえることですが、「●●をしました」という大きな実績をアピールすることで自分の器の大きさを示そうとする学生が毎年います。私も、そんな学生でした。「これだけ大きいことをやってきた、代表も経験した、だから俺はデキる人材だ!」と。しかし、社会人から見れば大したことをやっているとは思えないことのほうが多い。そんな指摘をすると、自信家の学生はムッとする。もしくは、以後の就活ゼミには来ない。これは損だと思います。「実績誇示病」とでもいうような状態にあることを自覚し、効果的に自分をアピールする方法を学べば、いくらでも納得してくれる社会人はいるはずです。しかし、学生として少し大きなことを仕掛けたという自負が、そのような素直な態度を阻んでしまうのです。
この文章を、いま(3年生の前期)読むということは、就活に対する意欲も高いはず。インターンシップを受けようと意気込んでいる方も多いでしょう。そういった、才能や自信のある皆さんならわかるはずです。皆さんがこれから立ち向かっていくフィールドは社会人の世界です。学生から見ればAway(アフェー)、価値判断の尺度は学生のそれとは異なります。相手のフィールドで戦うからには、相手のことを知らなければいけない。社会人の常識から見た学生の活動はどういうものなのか、社会人から見た学生のマナーはいかに低いのか・・・そういったことに思いをめぐらせ、できれば周囲の社会人とそういった対話を行っていただきたいです。
■就活の現場における「素直」と「素直でない」
素直の反対語は「偏屈」だそうです。就活において「偏屈」な人間はそうそういません。そこまで我を通す学生がいるなら、軽蔑の意味を込めて「尊敬する」と言いたくなります。
しかし、だからといって「素直」な就活生ばかりかというと、そうとはいえません。共感できないことはやらない、億劫なことはやらない・・・こんな学生が非常に多いのです。例えば、企業のOBOGに会って話を聴くことが大事だとすすめたとします。就活を題材にした漫画「銀のアンカー」でも同様のことが書かれていますが、社会人のサイドは多くの人がOBOG訪問をやってほしいと思っています。しかし、現実にOBOG訪問をする学生は半数に満たないのが現状です。就職情報サイト「ブンナビ」の調査結果などを参照していただければ一目瞭然です。
著者を含め就活ゼミの社会人と内定者のスタッフは、皆「OBOG訪問をしなさい」と指導します。それでも、きちんとOBOGに会う学生は少ない。「会いにいった?」と、メールなどで確認して初めて「いまから頑張ります」という学生も少なくありません。それは、「素直でない」学生です。言ったことをまずやってみる行動力が欠如しており、その時点で「2」に挙げた「自分の足で稼ぐ」学生との大きな差を作ってしまいます。次回に話しますが、自ら動く学生が最も強い学生です。
■就活を面接1回で終えた学生の「素直さ」
IT系の企業を目指している学生がいました。大学までスポーツ競技として一輪車に励んできた学生で、就活には少し出遅れたといって就活ゼミにやってきた学生です。彼は、スポーツ競技として一輪車に挑戦し、自己を高めてきたという経験を持っていました。
「どうしても第一志望の企業に入りたい」、そのために何をすべきかと質問を受けました。まだ就活の初期段階だということもあって「万単位の字数で自分史を書いてごらん」とアドバイスしました。ちなみにこの方法は、私のオリジナルではありません。中谷彰宏さんが『面接の達人』で毎年繰り返し就活生に推奨している方法です。私自身は就活のとき、これを実践せず苦労しました。逆に、就活ゼミをともに立ち上げた友人は、この方法で自己を見つめなおし、早々に志望企業に内々定を果たしました。
毎年の就活ゼミで、「どうせみんな書かないよなー」と思いながらこの方法を提示します。案の定、書くのは1割もいません。一輪車の彼は、5万字書いて持ってきました。彼は、書き上げた自分史を友人や先輩、社会人に見てもらいながら行動特性は何なのか指摘してもらって自己分析につなげました。私も、都内のファミリーレストランでそれを読みました。彼が、目標達成に向けて率先して改善を図ることのできる人間であること、常にトップを目指すが、その行動が伴っているため周囲の共感を生んで大きな支援を得られていることが5万字ににじみ出ていました。その5万字を600字程度にまとめた自己PRで面接に臨み、一発内定を果たしたのです。
一方、この作業をおろそかにしたために苦戦した学生が非常に多い。「なぜ書かないの?」就活時代の自分も同様ですが、数万字という膨大な分量を書く覚悟ができず、最初からあきらめてしまって書かないのだといいます。しかし、そのツケは就活終盤でまわってきます。決定的な場面で「本当にこの仕事に就きたいの?」という質問でたじろいだり、自己PRが表面的な内容になっていることに気づいて就活中盤から再び自己分析を行ったりするケースが見られます。
素直に取り組んでみるか、少し躊躇するか。その差は社会に出てからも大きな差を作り出します。
今回は、就活に臨む上で素直であることの大切さを説明しました。ちなみに、3回かけて、成功する就活生の共通点としてあげた3点に沿って説明を行い、その後5回にわけて自己分析の方法やエントリーシートの書き方、それに面接で気をつけるべき点について書いていきたいと思います。