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友達に向けて書いているし、自分に向けて書く。
書くという行為は頭の中が整理されて非常にすがすがしい。
書くことは捨てるということに近い気がする。
私は今の生活に至るまで困難続きだった。
離婚してからというもの、罪悪感だけが私を支配した。
もちろん相手への不満も多くあったけれど、
やはり自分の考え方や存在自体が相手を不幸に追いやり、
そして相手に包丁を持たせたのだと今でも思っている。
もう何も戻らないという事実があって、私はたった一年も前のことを思い胸を押さえる。
相手の実家には腰のまがったおばあさんがいた。
元気なお母様がいた。
しかし、私はあまり仲良くなれなかったのだった。
うわべだけの付き合いは得意だから大丈夫だけど、
やはり自分の親が親なのであって、
相手の親を親と思えなかった。
相手は私の親を「親」と慕った。
離婚するときも私に内緒で私の親にメールをし、
私が浮気をしているから離婚するんだとなじり、
そして「自分を信じて欲しい」と連絡したそうだ。
私の親はそんな相手に向かって、
「ばかやろう」と返事したと後に聞いた。
私は本当の離婚理由を誰にも告げずに、離婚届に判を押した。
そして一人で区役所の出張所に行き、新しい旧姓の住民票をもらった。
毎日が死ぬ思いだった。
結婚していたときに借りたお金を全部返せと言われた。生活費だと思っていたお金だった。
すべての金額をメモしていた相手にもう何も言いたくなかった。
あんたの好きにしてくれ。
もうほっといてくれ。
憎しみが残った。
私は無一文で家を出た。
何度も死のうと思った。生きている価値がどこにあるのかわからなかった。
今も少しだけわからない。
昔付き合っていて、心の隅にいる男は私が離婚したと知ったとき、
笑って「もう絶対にもてないね」と言った。
それから「小説書いたら?」と言った。
「書く書くって言って全然書かないから、だめですよ」と。
その笑顔に言葉に励まされた。
そしてそれはひねくれた彼の精一杯の私への情だと知った。
最低な私だった。
しかし離婚をしたところで彼をもう一度愛するわけにはいかないと、
それだけは固く心に誓っていた。
彼は私の特別だったから、
これからも特別でいて欲しい。
彼とは日々の生活なんて出来ないし、そんなものはいらない。
彼との新しい関係を建築することによって、
私は20代をようやく笑って振り返る。
そう思っていた。
今の彼を愛している。
そう思う。
つづく
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これは一つの小さな物語だ。
誰でも物語を作ることが出来る。
想像して夢を見る。
それが生きる喜びでもある。
しかし重要なことは、
それだけが生きる喜びでは決してないということだ。
気がつかないといけなかった。
私はいつか必ず気がつかなければならなかった。
昔、私は一人の人を好きになった。
笑顔が面白い人で、無口で、綺麗好きな人だった。
私は何故か彼が気になった。
嫌みが上手で、人の話をあまり聞かない、オシャレな人だった。
私は彼と付き合い、そして1年半で別れた。
つき合っているときのことをもう忘れかけている。
何があったか。
何を言われたのか。
何をプレゼントしたのか。
何を思って泣いたのか。
大好きだったという事実だけが残り、私を苦しめた。
私のような人間が、あの人とつき合っていたなんて、苦しい。
もしかしたら笑えることではないのだろうかと、私を苦しめた。
彼は私とつき合っていたことが恥ずかしいのではなかったかと不安だった。
自分を卑下することで精一杯虚勢を張っていたのかもしれない。
当時。
私はまだ24歳。
もう6年も前の話。
嫌みが上手で、人の話を聞かない、オシャレな男は、
まだ私の視界の中にいる。
私はさまよう。
一体何度彼を真ん中に置きたかったことだろう。
心の真ん中に。
しかし、私は気がついていた。
決して戻ることのない時間に。
そして彼とつき合うことで生まれた自分への嫌悪感に。
彼を愛したら私は自分を捨てることになるだろう。
予感だった。
彼を愛したら私は自分が大嫌いになるだろう。
その予感は的中していたのだから。
私は彼と別れてから二人の男とつき合った。
一人とは結婚した。
彼と別れてすぐ付き合い、そして一ヶ月で結婚を決めた。
思い切った方がいいような気がしたからだと思う。
穏やかな愛情があった。
自分を好きになれる日々が続いた。
そんなに素晴らしいことはなかった。
しかし、
私は昔の彼を視界のどこかに収めておきたかった。
そんな自分を何度も呪った。
最低だと思った。
最低だと思いながら、私は実行した。
何らかの理由をつけ、彼を違う方向で愛する形を生み出した。
生んだ。
そう実感した。
歪んでいてもいいから、
私はあなたの近くにいたいんだと思った。
昔の彼は平気で私を追いつめた。
嫌いだったのだろう。
それでもついて行こうとする私に、
周りの皆が不安に思っていたと思う。
どんな形でもいい。
そう思ったし、
もしかしたら新しい関係を期待していたのかもしれない。
そして離婚する時、
まったく違うことで「最低な女だ」と罵られた。
私は彼を思った。
罵られて当然だと思った。
行き詰まった。八方ふさがりだった。
死を思った。
死が近い気がした。
そして今私には素敵な彼氏がいる。
この人の前で何度か死のうとした。
本当に死にかけた。
嘘かもしれない。死にたいなんて嘘かもしれない。
逃げられるなら逃げたいと叫んだ。
誰から。
親。
離婚した男。
あの彼。
お金。
生きること。
全部すべてバカバカしかった。
何で平気な顔をして生きているのか、
全く分からなかった。
大切な友達にだけ教える、内緒話はまだまだ続くのである。
