事件が奪い取っていったもの | 「書く」を仕事に

「書く」を仕事に

オモロくてキビしくて愛しい、ライター生活。
取材・文/有留もと子
お問合せ/moco_moco_moco@hotmail.com

ライターの有留です。

 

京都アニメーションさんの事件で亡くなられた方々に

心からお悔やみを申し上げます。

 

 

 

 

私は、ある映像制作会社の正社員として

社会人生活をスタートさせました。

 

雑用を長くやりました。
ま、社内ニートみたいなものです。
 
私がようやく現場に出ることができたのは
入社してから1年後です。
 
当時その会社ではアニメーションのレギュラー番組を
2つ持っていて、
そのうちの1つの番組のAPにしてもらったのです。
 
本読みに参加させてもらって、
初号にも出させてもらって、
でも、先輩や上司のように発言できず。
 
スタッフの方々はみなさんプロ中のプロで、
気安く話しかけられる雰囲気ではありませんでした。
 
アニメーションのスタジオは
西荻窪にあり、
私も何度も西荻に通いました。
 
確か2階がスタッフさんたちの作業場でした。
デスクがぎっしり並び、
スタッフさんたちがもくもくと作業をしています。
 
その背中には厳かな空気さえ漂っていました。
 
この部屋には結界が張られていて
ふさわしいものしか入れない
と思いました。
 
私はその仕事を6年くらい勤めましたが、
結局2階の部屋に入ったのは1度だけです。
作画監督さんに宣材の絵を描いていただくため
内容の説明をしに行ったときです。
 
翌朝仕上がっていた絵は、とても繊細で美しく、
一晩でこんな作品をよくつくれるなあと
感動しました。
 
 
京都アニメーションさんの事件を知って
真っ先に思い浮かんだのが
あの西荻の2階の部屋でした。
 
アニメーションへの情熱。
仕事への誇り。
 
彼ら・彼女らの背中が
雄弁に語っていました。
 
アニメーションの作品は
そんなたくさんの背中たちに支えられている。
 
 
 
この事件が奪い取っていったものは
文化や未来や創造力なのだと
改めて思います。
 
合掌。