駆け込みジャコメッティ | 「書く」を仕事に

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オモロくてキビしくて愛しい、ライター生活。
取材・文/有留もと子
お問合せ/moco_moco_moco@hotmail.com

ライターの有留です。
いつもお世話になっております。
 
気がついたら、8月が知らん顔をして通り過ぎようとしていました。
もう秋かー。
私は大事なことを思い出し、慌てて新美へ。
 
 
国立新美術館開館10周年
ジャコメッティ展

2017年6月14日~9月4日
国立新美術館

 
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20世紀最大の彫刻家と言われるアルベルト・ジャコメッティ。
彼の作品は、独特の細長いフォルムで知られています。

しかし、最初のうちはキュビズムに影響を受けた作品も
制作していました。
この細長い形を追求し始めたのは、40代半ば以降です。


私とモデルの間にある距離は絶えず増大する傾向にある。
「もの」に近づけば近づくほど、「もの」が遠ざかる。
―アルベルト・ジャコメッティ


ジャコメッティは、見えたままの人間の姿を彫刻することに挑戦し続けました。
つまり、この細長いシルエットは、ジャコメッティに見えていた人間のかたちなのです。

人間がこんな風に見えていたなんて、
さすが、天才は違うわーポーン

なんて思っていたのですが、彼の作品を見ているうちに
だんだんと私の目も、ジャコ化してきて、
なるほど、人間ってこうだよね! と思うように。

彫刻には、ジャコメッティがかたちをつくるときにつけた指の跡がたくさんついています。
そのでこぼこ感も相まって、作品が微妙に振動しているみたいに見えてきました。

人間は、動いているときはもちろん、じっとしているときだって、
まったく何も動いていないということはありません。
第一、まず呼吸していますから。微かに振動しているんです。

静かでありながら、振動している。
これはまさに生きている人間そのものだ。

そんなふうに思ったんですよね。

《ヴェネチアの女》という、9体の女性像が
目の前に現れたときは、あまりの静けさと生命感に
しばらく動けませんでした。


彫刻も絵も、小説も、音楽も、演劇も、映画も……
作者が、人間や世の中をどう見ているのか。
その見方にふれたとき、私たちは感動しているんだな。
「私はこう見ています!」
という宣言がないものは、人の心に響かない。

そんなことを改めて考えました。

ひとつの彫刻はひとつのオブジェではない。
それは一つの問いかけであり、質問であり、答えである。
それは完成されることもあり得ず、完全でもあり得ない。

―アルベルト・ジャコメッティ