で、いま何してるんですか? | 「書く」を仕事に

「書く」を仕事に

オモロくてキビしくて愛しい、ライター生活。
取材・文/有留もと子
お問合せ/moco_moco_moco@hotmail.com

ライターの有留です。

いつもお世話になっております。


今年のテーマは
「Jump!」&「Renewal」。

「ムリ!」と思ったらとりあえずアクセルを踏むことにしています。
アクセルを踏んで、踏んで、踏みまくって、
気がついたら何この状況!
予定をつめすぎて、気分はもう11月後半の疲れ具合です。

しかも、「去年より3倍忙しくする」という実験を始めたばかり。

神さま、どうかお見守りください。
なんて、困ったとき限定の神頼みーてへぺろうさぎ


でも、実際は、ありがたいことなんです。
私の今の状況は。

たまに思い出すことがあります。

私が勤めていた作家先生の事務所では、年に1~2回、
先生の作家仲間や編集者を招待して、パーティーをしていました。

ベストセラー作家や、各社の編集者がたくさん集まり、
今考えればものすごくゴージャスな会だったと思います。

夏の夜でした。

事務所は人がいっぱいで、みんな楽しそうに話していました。
珍しく先生もご機嫌で、あっちの輪、こっちの輪と
挨拶して回っています。

助手たちは、灰皿を取り換えたり、ビールを足したり、
お料理が得意な人は、お肉を焼いたりしていました。

パーティー中とはいえ、電話は鳴ります。
私は電話をとり、要件をメモしていました。

するとそこに、先輩助手が現れました。
先生は、辞めていった助手たちも、呼んでいたのでした。 

「新しい人? 志望動機は?」
先輩は、ビールを片手に、私の横に座りました。

なんやねん、この人真顔
いきなりの先輩風です。しかもまあまあ強めの風圧です。

面倒くさいので適当に答えていると、
「そんな甘っちょろい考えじゃ、ここではやっていけないよ」
と言いました。

「そうですか。で、今、何しているんですか?」

説教モードに入り、紅潮していた彼の顔が、
一瞬白くなりました。

「いや、まあ……いろいろと。じゃ、頑張って」

先輩はそそくさと行ってしまいました。

私はワザと言ったのです。
彼を追い払おうとして、傷つけることを。
彼に仕事がなく、アルバイトをして食いつないでいることを聞いていました。

事務所にいる人たちを見ながら、
二つの世界があると知りました。

うまくいっている人の世界と、
うまくいっていない人の世界。

うまくいっている人たちは、堂々として、
気さくで、愉快そうにしています。

しかし、うまくいっていない人は、
すみっこに固まってビールを飲んでいました。

両者は交わることはありませんでした。

絶対にあっち側には行くまい。
 
背中を丸めてビールを飲んでいる先輩の後姿を見ながら
私は思いました。
 

しかし、数年後、仕事がなかった私を最も苦しめたのは
まさにあのとき、私自身が先輩に言い放った言葉でした。

「で、今、何してんの?」

友だちに聞かれるたびに、
べつに……と言いながら、私は、先輩たちの暗い輪の中に入っている自分を想像していました。

あの先輩、どうしているのかなあ。
もうとっくにライターなんて辞めただろうな。
それが賢い選択なのかもしれません。