コウモリの謎 哺乳類が空を飛んだ理由(わけ)
2014年4月21日発行
著者 大沢啓子・大沢夕志
発行者 小川雄一
発行所 株式会社誠文堂新光社
印刷所 株式会社大熊整美堂
製本所 株式会社ブロケード
カバー・本文デザイン 大木真奈美(SPAIS)
イラスト 森雅之(表紙) てばさき(本文)
表紙・月写真提供 榎本司
校正 祐文社
平易という意味での「やさしい」というだけではなく
「優しい語り口」でコウモリについて
わかりやすく教えてくれる大変良い本でした
ちょっと読むだけでも著者2人がコウモリの事が大好きだと伝わってきます
読んでいる間はてっきり夫婦でコウモリを研究している学者か何かだと思っていたのですが
巻末をみると、1988年に南大東島でオオコウモリに出会って以来、
世界を巡ってコウモリを観察している。
お話会や観察会、企画展示などコウモリの魅力を伝える活動をしている
コウモリの会評議員、としか書いていないので、多分そうではないのでしょう
137ページにシロヘラコウモリを見たいがために、22年間勤めた職場をやめた人が2人(!)もいるほどだ
と書いてあるので、著者2人がこの2人(!)のことなのだと思います
文章に加えて、かわいいイラストや豊富な写真もあいまって
とにかく読みやすく、わかりやすく、楽しい本です
それでいて未知への新鮮な驚きを与えてくれて
それによって好奇心が刺激され、コウモリのことがもっと知りたくなるという
他にコウモリの本を読んだことが無い私が言うのもなんですが
コウモリ入門書としてこれ以上のものはないのではないかと思います
著者はドラキュラから連想されるような
コウモリの怖いイメージを払拭したいようで
哺乳類の中でネズミの仲間に次いで多い、コウモリ約1300種類の中で
血を食料にしているのは中南米に住む3種類
それもそのうち2種類は鳥の血専門で
哺乳類の血を吸うのはナミチスイコウモリ1種類だけだとか
オオコウモリの仲間は皆、果物を食べていて
獲物を襲ったりは基本しないし
顔もネズミに似てちょっとかわいい、
それ以外の小さなコウモリ、一般的にイメージされる洞窟に大群で住んでいるようなコウモリ達は
蚊をはじめとした虫を食べてくれる益獣であるなどと教えてくれます
彼らの独特の顔つきも、エコーロケーションのための超音波を出すのが鼻で
そのため、鼻をラッパ状にしているからだと知ると
さほど不気味だとも思わず、愛嬌があるというように思えてきます
また彼らは我々日本人にとっても
そこら中にいる最も身近な野生動物でもあり
具体的な観察の仕方や
その際の注意事項についても
ページを割いています
その他、コウモリ保護団体BCI(Bat Conservation International)の本部があるテキサス州の州都オースティンにある
コングレスアベニュー橋には夏の間、150万頭ものメキシコオヒキコウモリが住み、
その出巣が名物になっているとか
同じくテキサス州にあってBCIが所有、管理しているブラッケン洞窟は夏の間メキシコオヒキコウモリの子育ての場となっていて
2000万頭もの大群になる世界最大のコウモリねぐらであり
通常は立ち入り禁止なものの、会員や一般向けの観察会が年に何回か行われているとか
フィリピンのスービック経済特別区の一角にバット・キングダムという名前の保護区があり
世界一大きなジャワオオコウモリや世界一重いフィリピンオオコウモリが住んでいる
同じくフィリピンのサマル島にはモンフォート家の敷地に
ジョフロワルーセットオオコウモリの180万頭のねぐらがあって保護されており
一般にも公開されいているとか
ザンビアのカサンカ国立公園では10月半ばから12月にかけて
この季節に実るフトモモの仲間等の野生の実を目当てに
800万頭のストローオオコウモリが周囲の国々から集まってきて
1ヘクタール程の狭い土地にこれだけの重量の哺乳類が集中するのは世界一、等々
世界中のコウモリに関係する名所も紹介してくれていました
ストローオオコウモリの大集結はNHKのワイルドライフやダーウィンが来た!でも
取り上げられています
https://www.nhk.or.jp/wildlife/archive/p222.html
http://cgi2.nhk.or.jp/darwin/articles/detail.cgi?p=p471
大沢夕志 大沢啓子の オオコウモリ写真館
http://fruitbat.jp/