【お勧め本】世界を変える製品 | 「風の色を探して」

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久々のお勧めの本です音譜

話が長くなるので
興味のない人はパスしてくださいあせる


本日おすすめする一冊は、

フレッド・ボーゲルスタイン著
『アップル vs. グーグル』

その名の通り、アップルとグーグルの戦いの舞台裏を描いたノンフィクションです。

のっけから何ですが、
この本、無茶苦茶面白いです。

アップルがiPhoneでつくりあげたスマフォ市場に、グーグルがアンドロイドで参入。
その結果、それまでシリコンバレーの中でも最も緊密な関係だった二社が、骨肉相争う戦いを開始。
そして、アンドロイド端末がiPhone以上のシェアをとるようになると、アップルはiPadを出して、タブレット市場を革新。
しかし、これまたアンドロイド端末が過半数のシェアをとるようになる。

…とまあ、アップルが切り開いた市場をグーグル陣営が追って、結局、アップルが数の上では負けていく、という構図が繰り返されていく過程を本書は描いていくのですが、それ自体はまあどうということはありません。

面白いのは、iPhoneやアンドロイドのような、「世界を変える製品」がいかに生まれたのかという開発秘話を、スティーブ・ジョブズやエリック・シュミットなどの「英雄」達の視点ではなく、その他の幹部やエンジニア達=「シリコンバレーの『見えない』英雄」たちの視点で描いているところです。無名の人達の話から紡がれる舞台裏のドラマは、本当に興味深く、かつ、示唆に富みます。

真っ先に思ったのは、ここまでやらないと世界を変える製品を生み出すことはできないんだな、ということでした。
アップルもグーグルも、本当に凄い。
ここまでやるか、と正直、思います。
でも、凄く能力の高いエンジニア達が、ここまでこだわって、ここまでボロボロになるまで働かないと、不可能を可能にすることはできないんだな、とも教えられるのです。自分の甘さを痛感させられもします。

そして、アップルが特に凄いのは、その凄い能力の持ち主達を平気で使い捨てにできてしまうことです。ジョブズの強烈なエゴで追い込んでいくので、皆、燃え尽きてしまう。
アップルの製品の陰には、死屍累々の屍の山ができている、という感じです。
それを非道ととるか、王道と讃えるか、評価は分かれるでしょう。

だけど、やっぱりジョブズはチャーミングなんです。iPhoneの開発者に対して、「みんなが恋に落ちる電話をつくりたい」なんて言うのですが、こんなこと言える人、なかなかいないですよね。

一方のグーグルは、アップルの独裁者的なスタイルは体質的に受け付けない。
だから、ジョブズのことを尊敬してはいても、アップルが、ジョブズの世界観でこの世界を染め上げようとしていることが許せない。
これは、アップル対グーグル、というより、クローズド対オープンの戦いであり、信じる世界観自体の戦いです。

結果論から言えば、グーグルのオープンモデルが勝っているように見えますが、人の心に残るものを生み出せているのは、やはりクローズドな独裁者モデルのアップルが生み出した製品達なんですよね。そこがまた興味深いところです。

なお、本書は、アップルとグーグルの戦いを描きながらも、これからIT業界が向かう先、情報化社会の行く末を教えることを怠りません。「クラウド」「ビッグデータ」「プラットフォーム」など、流行の言葉の真の意味も、アップルとグーグルの戦いの中から理解できることでしょう。それがわかれば、なぜグーグルが自動運転車の開発に注力しているか、なども見えてきます。

新しいもの、世界を変えるものをつくりたいと思っている人は勿論、情報化社会の向かう先、メディアやコンテンツやデバイスの行く末を読み解きたい方という方にも必読の一冊だと思います。

是非、読んでみてください。


hiro