離婚までの細かい経緯、正直、覚えていないところも多いです。

普段は、記憶力がよいと言われることが多いので、

意識的に忘れたのか、それとも、ほんとにどうでもいい些末なことだったのか……


ともかく、わたしはその頃出会った年上の恋人のことでいっぱいでした。

彼(夫)の夜勤の日に、恋人の家に泊まることが増え……。


たぶん、物事の善悪や貞操観念について、感覚がずれていたように思います。

だけど、

彼が、わたし以外の人を愛した。

わたしは、彼しか愛したことがなかった。

そんなときの、初めての新しい恋だった。

わたしは、彼が私以外の女を抱いたことに対する嫌悪感を、恋人を使って消してゆきました。


こんなこと、なんでもないんだと。

少し気に入った人となら、いくらでもできる行為なのだと。


日常的なアクシデントのように、受け止めることにしたんですね。

あの頃の自分、ほんと壊れていたなと今なら思います。


しかし、

自分の心を守るほうが先決でした。


彼の浮気をいつまでも受け入れられないわたしは、

彼と同じことをすることで、彼のやったことを正当化しました。

こんなこと、なんでもない。

そうやって。

傷ついたことを、無かったみたいにして。


処置が正しかったかどうか、今でもわかりません。

けれど、苦痛を早く終わらせるという意味では、期待どおりの成果でした。

彼を許すことができるようになりました。


わたしは、ある日彼に告げました。

わたしも同じことをしました。

彼以外の人に抱かれました。

だから別れましょう。


彼が混乱しているうちに、

わたしは引っ越し先を決め、

家具や家電は彼用にすべて残して、引っ越しの手続きをしました。

一応、契約前に彼に電話を入れましたが、やっぱり賛成は得られなくて……、

不動産屋さんに、親がなかなか子離れしてくれなくて、なんて、嘘をついたのを覚えています。


彼が欲しかったのは、健全な家族。

わたしは……、

わたしが欲しかったものはなんだったのでしょうね。

今でもわかりません。


そうして無理やり離婚届を彼に渡して、署名をもらって。

証人代行に、証人を頼んで。

約10年の付き合いは、すっかり消えました。

最初から、わたしなんて存在しなかったみたいに、彼の人生は再スタートしました。


わたしはただ、

彼の貴重な10年を、わたしなんかに費やしてもらってしまったのが、申し訳なかった。

彼を幸せにできなくて申し訳なかった。

わたし自身がほんの少し期待していた未来を、消されたことが、恨めしかった。


けれど、

もう子供を産むことを考えなくていいことはほっとしました。

子供を望むことが難しい体で、

自分の遺伝子を残そうとも思えず、

しかし、彼は子供を望んでいる。


そんな状況は、自分でも気づかないうちにプレッシャーになっていたのかもしれません。

離婚して、今までにない解放感を得ました。

もう、子供を産もうとしなくていい。

その喜びがあったことは事実です。


こんな考え……、

クズだけが持つと思いますか?

たぶん、こういう思考回路の人間が安易に子孫を残して、

我々ができあがっているんだろうなと思います。