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宮殿

夜よ、ありがとう。

ソファに座った女性に話しかけようとした時、港祭りの花火が、盛大に打ち上がる音が聞こえました。窓から、見事な大輪の虹色の花火が次々と華開くのが見えます。

「おっ!見て!港の花火っ!!」私は次々と打ち上がり、拡がり、咲き乱れる花火を指さしました。
しかし、女性は花火の見える窓際のソファに居ながら、花火の方へ視線は向けてくれません。
荘厳で穏やか、美しさ極まり、無表情のまま、やや俯き加減で居ます。

「凄いよ!!綺麗だっ!!ほら!!」少年が母親にせがむような口調で、花火を見るようにと、私は声を大きくあげるのですが、やはり、花火の方は見てくれません。
彼女が何故、一緒に花火を見ようとしないのかは、私は知っています。
はなから知りつつも、シラを切り、花火に気をそらせようとするのでした。

実を申しますと、彼女は私に、教え、指導をする為に、このホテルの部屋に現れたのです。
彼女が花火を一緒に見てくれぬ理由は、私が、今いるあの世と、前世で生きていた、この世とを、霊界の掟を破り、勝手気ままに往来している事を、叱りに現れたのです。

普段、周囲の皆様から、単なる変態おやじと思われている私。
大筋では全く正しい御解釈なのですが、もう一面の私は、宇宙史上、前代未聞の掟破りの者なのです。
皆様ご存知の通り、私が、こちらの現世に紛れ込み、現世であの世と呼ばれている、こちらの世界の様相を、具体的に書き記そうとしている事も、決して見逃すわけにはいかない、宇宙を揺るがすほどの大問題、となってしまっているのです。

「あの世の状態を、この現世に明らかに伝えることの、どこが悪いのか!?」
私は、皆様の生きておられる現世での肉体は死んではおりますが、、今現在、こちらのあの世においての命をかけて、この女性と対峙しているのです。