このポスターを見て、
 
おばあちゃんと若者が繰り広げるピカレスクもの、と勝手に想像していた。
 
舞台は森の中に転がり込んだ主人公の青年からはじまる。ピカレスクには遠い、気が滅入るようなひったくりの常習犯だったらしい。
 
そんな彼が小柄なおばあちゃんがバイクで転び怪我をしているところに出会したことから、やがて人生の落とし前をつけ、やり直す決意をするまでの物語だ。
 
若者はおばあちゃんの孫と周りから誤解されて、いつの間にかお節介焼きのおばさんトリオやシゲ爺と交流するうちに、だんだんいい人になっていく。おばちゃん連中の屈託のない明るさとグイグイくる感じにタジタジになりながらも、出されたご飯の美味しさにうめえうめえと簡単するところなど、根は悪くなかった感じが出ている。おばちゃんたちには山羊か!と突っ込まれながらも凄んだりせず、弱っているところも世慣れていない感じだった。
 
後半では気丈で明るいスマの唯一の泣きどころである二男豊昭が登場し、
 
高齢の母の年金を目当てにやってきた50近いこのダメ息子を、いずみは父に重ねて怒りを覚える。
 
そこからシゲ爺との会話があり、翔人はずっと心の奥にあったやり直すことに向けて舵を切った。
 
佐々木愛演じるスマの明るさと、末っ子の出来の悪い次男(長女長男は際立って出来がよかったせいで、比較されてひがんでしまう子だったらしい。そんなダメな子が可愛いとスポイルしてしまった)に苦しめられながらも遮断できない弱さ。
 
翔人も出頭して3年で出てきて、村に戻ってきた時、かつての背中を丸めてなにかあればすぐ逃げ出そうとするかのような、落ち着かない感じはなく、堂々として立派だった。もちろん、演技と衣裳の効果なのだが、ほんとうに人が変わったようだった。
 
コロナ禍にあって、なおさら後味のいい、人間のよさを信じられるような物語にホッとするのだ。
スマ役の佐々木愛が舞台の終わりでは背がしゃっきりして、若返ったのも印象的だった。現在77歳の佐々木愛が90近いスマを演じていたのだった。
 
息子は高校生割引で半額の会費なのだが、4月からはどうする? 会費は就職したら自分で出してもらうけど、といったら、会員を続けたいということだった。意外だったけれど(面倒だからお母さんひとりで見に行ってというかと思っていた)、ほんとうにいいものはわかるんだなと思った。少し前に見た「女の一生」も「朗読劇 人間失格」も熱心に見て、よかったと言っていたもんなあ…。
 
ではでは♪