『私も美術館でボランティア』淡交社 1999年
美術館でボランティアをしようと思うよりすこし前に買ってよみ、
その後も何度か読んだのですが、
久しぶりに読むとまた身に染みる本でして。
1999年ですから、巻末の「ボランティアが活動する美術館一覧」には岩手県立美術館は含まれていません。岩手県立美術館が開館したのは2001年10月。
ボランティアが活動する美術館には、この数年間で訪れた美術館があって、ああ、あそこもあそこもだ、と思う反面、ん?そんな気配はなかった気がするが、というところもあり、
ボランティア活動の盛衰を考えてみたりする。
美術館ボランティアに限らず、ガツーンと耳に痛いのは、
かりにあなたが美術館の展示解説ボランティアだとしよう。
あなたのギャラリートークを聴いた一人が「あなたの解説はまったくもって聴くにたえない。この三十分は時間の浪費だった」と言ったとする。さてあなたはどう弁明するだろうか。「友だちから誘われただけで本当はこんなことをするつもりじゃなかった」とか「学芸員のオリエンテーションで言われたとおりにやっただけだ」とか…中略…言い訳は一切許されない。なぜならあなたは、ボランティア、だからだ。
曖昧な理由で逃げようとすれば、きっと相手は「それなら最初からボランティアをやらなければよかったではないか」という最後通牒を突きつけてくる。自発的にやってみようと考え、そして動き出したからには、弁明の内容は自分の中から作り出さなければならない。
このようにボランティアとはきわめて攻撃されやすい。なぜなら、自分以外に自分を正当化してくれるものが何もない、剝き出しの状態の自分自身を社会に晒さなければならないからだ。
(「ボランティア考」貝塚健)
前に読んだときはさらっと流していたのか、突き刺さるようなところじゃなかったのになあ。
本はやっぱり繰り返しよむほうがいいと思うのは年月がたつと同じ本を読んでも全然ちがってくるからです。
さて、ボランティアが活動をしている美術館が取り上げられている
「Ⅱ私も美術館でボランティア」にはさまざまな美術館とボランティアが登場します。
取り上げられた国内30の美術館とそのボランティアで知っている美術館は、
福岡アジア美術館
目黒区美術館
世田谷美術館
板橋区立美術館
名古屋市美術館
宇都宮美術館
埼玉県立近代美術館
水戸芸術館現代美術センター
静岡県立美術館
萬鉄五郎記念美術館
北海道立近代美術館
国立科学博物館
名古屋市美術館では解説ボランティアの女性ふたりに美術館の建物から(黒川紀章設計事務所だった)常設展示の彫刻、コレクションなどを解説してもらって、すごく楽しかった記憶があります。
静岡県立美術館では「美少女の美術史」展開催中で、関連実技講習会のシルクスクリーンはどうですか、とエプロンをかけたボランティアの男性にすすめられて、おかげで高橋真琴の目のシルクスクリーンができました。
ボランティアの方と直接かかわったのはこの2館だけですが、もしかしたら、国立科学博物館で息子の姿が見えなくておろおろしていたときに声をかけてくれたのもボランティアの方だったのでは!と読み返して気づいたりして。
美術館ボランティアの募集もさまざま、研修も、ボランティアの活動内容もほんとうにさまざまです。
私は特に厳しい試験も作文も面接も課されなかったし、研修期間は自分で決める感じで、解説ボランティアグループに入って2年目で、やる!と言わないといつまでもやれないから、と思って解説デビュー。
当日は先輩方が聴きにきてくれて、ありがたかったです。
その後はほんとうに自由にやらせてもらっているのですが、その自由度が高い分、おなじボランティアの方の解説に参加したり、学芸員さんのコレクショントークやギャラリートークにも参加し、さらに他館を訪れたときに解説があればハーイハーイと参加する。ようにしている。そのわりに自分でもいつまでたってもド素人だなーと思うけど。
美術館をいくつ見ても、美術展巡りをしても、私みたいな教養も基礎知識もない人間には砂地に水を撒くようなものなのでは~という不安がつねにあるわけですが、
それでもこの本を読み返して、知っている美術館がいつのまにこんなにふえたんだろう、と思って、
出会ったボランティアさんや学芸員さんのギャラリートークを思い出したりして。
まあ人間年をとればとるほど、急激な成長というものはのぞめなくなる、なににつけても。
私は傍らにあらゆることに伸び盛りの小僧がいっぴきいるので、自分の遅々とした歩みがおそろしくなるんだと思う。
絶対、私は数年前よりは進歩している。
本を読み返すと根拠なき自信がわいてくるのがいいね(笑)。、