先日の「桂文珍独演会」(岩手県民会館 8月26日)の会場で
売っていたCD,DVDのうち、「らくだ」を購入したのですが、
「らくだ」にもいろんなヴァージョンがあるんだなーと。
有名な古典落語ですが、もとは上方落語だったということは
いまWikipediaをみて知りました(笑)。
らくだとあだ名される長屋の鼻つまみ、一度も働いたことのない
(つまりたかりと強請が生業)男がふぐの毒にあたって死んだ。
訪ねてきた兄貴分の熊五郎が、らくだの葬式を出してやろうと、
通りかかった屑屋を使いに出して、
月番や大家から酒や肴を調達させる。気の弱い屑屋は泣き出さんばかりだったのだが、
「酒を出さないとかんかんのうを躍らせるぞ」の脅しで、実際にらくだをかついで
かんかんのうを躍らせ、無理にすすめられて呑んだ酒で悪酔いし、
大胆になっていく。
しまいには熊五郎と兄弟分の契りをかわし、もちろん、自分が兄貴分だとまで
吹かすのだった…。
落語は噺家によって大胆なアレンジがあるのですが、
桂文珍の屑屋は酒で気が大きくなったという以上に、
もともとが酒好き女好きで、あげく、前のおかみさんを貧乏と苦労の底で死なせ、
幼い娘を男手ひとつで育てたという過去がある。
だからこそ熊五郎に酒を進められても最初は固く辞していて、
だからこそ小心者があっと驚く豹変をしたわけだ、と腑に落ちる。
ここの屑屋の一人語りでは、見るに見かねた長屋の連中の世話で
のち添えをもらって、そののち添えが前妻の娘をひきたてて、
なにかもらうとこれはお姉ちゃんにと言ってくれるんだ、と、
ほろっとさせる。
もはや熊五郎はかすみ、久六の独壇場。
「らくだ」をはじめて見たのは、映画の「シネマ歌舞伎」で、歌舞伎の「眠駱駝物語 らくだ」でして、
中村勘三郎が屑屋久六、坂東三津五郎が熊五郎だった。
その後、落語の「らくだ」もいくつか聴きくらべた、といいたいところだけど、
そんなに「らくだ」のCDはなかった(笑)。
文珍の「らくだ」は酒を飲んで人が変わる屑屋のさまざまな顔がおもしろくて、
これを独演会で聞きたかったなーと思う私でした。