それからは、何事も無かったかのような日々が続いた。
橋本は相変わらず、”客が、客が、”と言い、特例品のリクエストを”してやった”と誇らしげに本社の事務の女の子に電話で話す。
それを聞くたびに横で明世さんが眉を少ししかめる。
社内の空気が居心地悪いから、田上さんはいつも早めに営業に出る。
修理が入ると、橋本が何もしないのも相変わらずだ。
修理と言うと、どうしても僕でも力不足で、勿論橋本にも田上さんにも出来ない案件が来た時があった。
断ろうにも他店からの依頼で、これを断るとウチの営業所ではこのレベルの修理が出来ない。とバレてしまう。
『いやあ、こういうの初めてなんです。』
って”朗らかに”他店の所長に電話をしてヘルプで来て貰った。
『今まで鈴木さんにやって貰っていたので分からないんです。申し訳無いです。わざわざすみません。ちょっと教えて貰っていいですか?これからは自分達でもちゃんと出来るようにします。』
そう言いながら、他店の所長さんが修理する傍らパシャパシャと写真を撮り、
『助かりましたっ!本当にありがとうございました。お陰で次は自分達で修理出来ます。』
と明るくお礼を言っていた。
その1週間後、丁度同じ案件の修理依頼が入って、僕は先週やったばかりだし忘れないウチに出来るいい機会だと思ってたのが、その地域の取引業者さんに下請けに回してしまった。
確かに遠いかもしれないけど、日帰りで行ける距離だし鈴木さんがいた時には修理に出かけていた地域だ。
あんなに他店の所長さんにお礼を言っておいてこれ?
他店の所長さんも、あんなに丁寧に教えてくれたのに、これ?
この人と同じ職場で働くの、ちょっと嫌悪感を感じるかもしれない。
そんな風に思うようになって来た。