今年もＡさんたっての願いで雪国を旅行した。

去年は治療開始から１ヶ月目の旅行で車窓にもたれながら眺めた雪景色も

今年は先頭車両に行ったり、吊り革を握って前のめりになりながらＡさんは少年のように楽しんでいた。

初日は行きの東北新幹線の故障で乗り継ぎが旨くいかず、Ａさんが一番期待していた花輪線にタッチの差で乗れず。いきなり計画総崩れ!!!

花輪線→奥羽本線→青い森鉄道という雪の内陸周遊は泡と消える・・・

が、そこは鉄道少年を二人擁する我が家、間もなく廃線になる十和田観光電鉄に乗るべく

急遽予定を変更
岩手銀河鉄道→青い森鉄道→十和田観光電鉄にチャレ～ンジ!!

そして、余裕の出た時間を盛岡観光に当てた。

十和田観光電鉄の沿線は白鳥の飛来地だったようで
午後の柔らかい陽射しに象牙のように光る雪の田んぼに

白鳥の可愛いらしいシルエットが絵本の挿し絵さながらに並んでいた。

廃線となる駅舎は石油ストーブとスタンド蕎麦屋のお出汁の匂いが混じり合い

学生時代毎冬通ったスキー場の食堂を懐かしく想いだされた。

今回の旅行はのんびり鉄道とゆったり温泉旅館がテーマとやらで

初日は青森三沢、古牧温泉にある青森屋、あの星野リゾートで再生した旅館だ。

リゾート苦手な私達だけれど、当初の予定では唯一条件の叶った旅館ということで決めたらしい。

さぁて、その噂の青森屋、まぁ、到着いきなりやられました・・・・・

名物女将、仲居さんならぬイケメン、イケガールのお出迎え!!

送迎バスから降りるやいなや「いらっしゃいませ!!ようこそ、青森屋へ!!」の爽やかスマ～イル!!

でも、まだこの驚きは止まらない。

Ａさんがお出迎えコーナーでサインをすると「ご署名頂きました！」「ありがとうございます!」と
まるで「ドンペリご注文頂きました!」の世界・・・

で、フリーズした私は彼らの胸元を見て虫眼鏡で光を集めるときの黒点に・・・・・

名札、名札、
な、ふ、だの名前がな、ま、え・・・

そう、親からもらったお名前なわけ。

目の前でひざま付いてるイケメン君は(たかひろ)

作務衣にマフラーの支配人？は(かずお)で

ストーブ係地元MAXのお爺ちゃまは、なんと(よしかず)さま～～～～～～!!

この一瞬でしっかり青森屋に釘付けの私達でした。

それから、
部屋に荷物を置いて
ちょっと複雑な気持ちで温泉に向かう。

入り口に
流行りの選べる浴衣と一緒に(鯉のエサ１００円)

・・・・・
・・・・・

全く想像つかずで入った温泉は総ひば造りの見事な浴室。

しかもヒアルロン酸入りかと思えるほどまったりと肌に絡んでくるお湯!!!
詰めて帰りたいような美容液風呂!!!

でも、だからって鯉のエサは関係ない。

美容液風呂を満喫したＦと私はいよいよ露天風呂へ。

これまた不思議で
扉をまたぐとそこがすぐお湯の通路→湯溜まりという構造。

そして、その湯溜まり、
ドンと突き当たりにある広～い池と壁一枚はさんで繋がっていて

その壁の向こうには、なんと　美しい鯉とつがいの鴨が湯船から溢れるお湯をのんびり浴びていた・・・

もちろん、(鯉のエサ)は
ここで使う、半身乗り出して蒔いてあげれば、手の届くところで優雅な舞いが見れるということだった。

手前に鯉と鴨、向こうに雪山と滝、水面に揺れるねぶた灯籠・・・

お湯よし、景色よし、
類い稀な雪国温泉だった。

結局、私は更に二回入ることになり、夕飯後は満月を愛で、翌朝食後は鯉にエサをあげる横一直線に並んだお婆ちゃま達の背中にほっこりしたのであった。

　　　　　　　続く

『雪国旅行 青森』

『雪国旅行　青森』