【シングルよもやま話 58】 ツッコミ甲斐のある歌詞がちょっと笑えるマイナーな歌謡曲はいかが? | 歌謡曲(J-POP)のススメ

歌謡曲(J-POP)のススメ

音楽といっても数々あれど、歌謡曲ほど誰もが楽しめるジャンルは恐らく他にありません。このブログでは主に、歌謡曲最盛期と言われる70~80年代の作品紹介を通じて、その楽しさ・素晴らしさを少しでも伝えられればと思っています。リアルタイムで知らない若い世代の方もぜひ!

 前回記事からまたまた間が空いてしまって、すっかりご無沙汰してしまいましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。この間に、東京では54年ぶりに11月の初雪を観測してみたり、この冬は全般的に寒さが厳しい感じがします(寒いのはやだやだ…)。

 

 さて今回は、前回記事で予告しておいたとおり、歌詞の内容に思わずツッコミを入れずにはおれない歌謡曲を3曲ほどご紹介したいと思います。とはいえ、どの作品も(歌詞はともかく)曲の方は素晴らしいので、知っていて決して損しないこと請け合いですよん。

 

 まぁ、このブログではこれまでにも、「こちょこちょ娘」(小松みどり)「仮面舞踏会」(ポピーズ)「夜光虫」(宗田まこと)あたりを筆頭に“その手の(←どの手だ)曲”を散々ご紹介してきましたからね(最近の記事でも、「土耳古行進曲」(小沢昭一)なんかは同類項でしょう)。読者の皆さんはきっとかなり強力な“免疫”をすでにお持ちのことと勝手に判断して、話を進めていくことにします(爆)。

 

 最初に取りあげるのは、水谷豊の熱中時代の主題歌「ぼくの先生はフィーバー」(1978.10.1発売、オリコン最高位20位、オリコン売り上げ枚数9.8万枚)のヒットで知られる原田潤クンの3作目シングル(↓)で~す。

 

「ぼくはハト」(原田潤)

作詞:山田典吾、作曲:平尾昌晃、編曲:若草恵

[1980.7.1発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数-万枚]

[歌手メジャー度★★★; 作品メジャー度★★; オススメ度★★]

 

 

 

  タイトルを聴いただけでこの作品のテーマがピンと来た人は、もの凄くいい勘してます。この作品は、実写版映画「はだしのゲン」の主題歌なのですが、「はだしのゲン」と言えば、原爆を落とされた広島で必死に生き抜こうとする子供(ゲン)の生き様を描いた作品。つまり、“ハト”=平和の象徴 → 「ボクは平和がいい」という意味が込められているワケですねー。で、テーマはいいとして、肝心の歌詞が笑えるんだなこれが。

 

♪ 君はいいもの 持ってるね そいつを僕に くれないか

  君のものは 僕のもの 僕のものは 僕のものさ

 

 ↑ これなんか、「お前はジャイアンか」ってな感じだし、

 

♪ 弱いものなど いじめるな そいつは小さい 友達だ

  小さいものは 美しい 大きなものは 汚すぎる

 

 ↑ これに至っては、「その後半の考え方はちょっと極端やろ」的な問題発言だったりする。

 

 ま、おそらくこの作詞家のセンセは、これらの歌詞をあえて確信犯的にあてがって、戦争という極限状態に追い込まれた子供に“ありがち”な思考パターン(=視野の狭さ)を表現しようとしたんでしょうね。

 

 それにしても、(原田潤クンの)鼻にかかっていてちょっとこましゃくれた声質は、この「ぼくはハト」でも健在で、おぢさんは何だか心がほっこりきてしまうのでした…。

 

 それでは次の作品、行ってみましょう~。歌っているのは、「ラビアン・ローズ」でデビューした高橋沙羅の2曲目ですが…、今回ご紹介する中では歌手も曲もダントツで知名度が低いでしょう、きっと。

 

「サバンナ感覚」(高橋沙羅)

作詞:なかにし礼、作曲:鈴木キサブロー、編曲:松任谷正隆

[1981.3.21発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数-万枚]

[歌手メジャー度★; 作品メジャー度★; オススメ度★★★]

 

 

 

 「タイトルの『サバンナ感覚』とは何ぞや…!?」と、最初に興味をそそっておいて、曲を聴いたあとに「なるほど」と腑に落ちるようになっていて、このタイトルの付け方は実にうまい。で、この曲に関しては、歌詞を書き出してしまいましょう。

 

♪ 私の二つの 胸の間に 額をうずめて 泣いてもいいのよ

  母の温かさ 姉の優しさ あなたを包んで 愛したいの

  強い敵と戦い そして負けた時には 

  傷が治るまで 休んでいるのが 本当の男よ

※ サバンナ サバンナ サバンナ 恋は原始的に

  サバンナ サバンナ サバンナ けだものみたいに

 

♪ あなたの怒りを 心ゆくまで 激しく優しく 私にぶつけて

  表に向けたり 裏返したり 私をおもちゃに してもいいわ

  もしも愛があるなら 口で言わず力で 身体に教えて

  私を夜どおし 死ぬほど泣かせて

 

(※ くりかえし×2)

 

 1番は母性をもって男性を包み込む内容で、まあなるほどといった感じなのですが、サビに“けだもの”というフレーズが出てくるあたりから、グッと雲行きが怪しくなってくる(爆)。で、2番は1番とうって変わって、特殊な”趣味”の世界へ突入していくんですねー。「表に向けたり 裏返したり」って、オセロやってんじゃないんだから(まあ勝手にやってろという感じですが…)。

 

 以前に記事を書いた「仮面舞踏会」も似たようなパターンでしたが、実はあちらの作詞もなかにし礼センセでした。やはり、根っからそういう方面がお好きな方なんでしょうねぇ…(←完全に決めつけてる)。

 

 ちなみに、歌っている高橋沙羅という女性についてはほとんど情報がないのですが、歌唱力も表現力もかなりイイ線いっていただけに、この「サバンナ感覚」が2枚目にしてラストシングルになってしまったのはちょっと勿体なかったですね。

 

 …さて、ラストはこれまたなかにし礼センセによる笑える迷作をどうぞ! この作品はオリコンの記録上は全然売れてないんですが、私はどこぞのバラエティ番組で頻繁に流れていたのをリアルタイムで目にして、ミョーに記憶してるんですよね。だって、歌詞があまりに印象的(=ヘン)だったから…(苦笑)。これですよん(↓)。

 

「女はそれを待っている」(ニュー・ホリデー・ガールズ)

作詞:なかにし礼、作曲:川口真、編曲:川口真

[1979.9.21発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数-万枚]

[歌手メジャー度★; 作品メジャー度★★; オススメ度★★★]

 

 

 

 この曲も字面がマヌケで笑えるので、全歌詞を書き下してしまいましょう(爆)。

 

※ 女の時代が 目の前にやってきている

手ぐすねを引いて 女はそれを待ってる

 

♪ 愚かなくせに 無力なくせに 威張りくさってた

  男性どもの 時代はついに 滅び去ってゆく

  そのときが来たら 何から始めよう

  楽しみだわとても 胸がワクワク

  スカートを穿かせ 口紅を赤く塗らせ

  ハイヒールを穿かせ しゃなりと腰を振らせよう

 

  耳を澄ませば 聞こえるでしょう

  男性が滅びる日の 近づく足音

(※ 繰り返し)

 

♪ むかし男は美しかった 今は見苦しい

  奴隷にしたら 便利だろうが とても愛せない

  美しい者は 美しい者同士

  愛し合うわ そうよ女同士よ

  男は働け 前掛けをして働け

  炊事に洗濯 アイロンかけにお掃除

  その日になって 辛い思い

  したくないなら 今からゴマを すりなさい

 (※ 繰り返し×3)

 

 この曲がリリースされた1979年といえば、’60年代後半にアメリカで発祥した“ウーマン・リブ”運動はすでに落ち着いていたものの、“男女雇用機会均等法”はまだ成立しておらず(成立は1985年)、東京でも専業主婦と比べると共働き家庭の方が珍しかった時代です。昨今の情勢に鑑みると、能力のある女性ほど理想と現実のギャップに苦しんだ時代、とも言えるでしょうね。

 

 この「女はそれを待っている」は、そうした女性による鬱憤晴らしという意味において、その気持ちは良く理解できるんですが、「男にスカートを穿かせて…」のくだりや、「男性は見苦しいが女性は美しい」あたりが、何だかミョーな方向に展開しちゃってるんですよね…つーか、この女性ってば、かーなり“サドっ気”入ってやしないかい…? SM好きの(←決めつけてる)なかにし礼センセが一体どこまで狙って書いているのか量りかねるとはいえ…その“ゆがみ具合(いかれ具合、とも言うかな)”は、思わずツッコミを入れずにはおれません。

 

 

 …そんなこんなで、今回の記事はこんなところでおしまい。今日は大晦日ということで、今年ラストの記事ということになります。2012年3月にスタートした拙ブログも、最近は忙しさにかまけて更新ペースもすっかり亀さん状態に成り下がっておりますが、何とか5度目の年越しを迎えることができました。これもひとえに、読者の皆さんが温かく支えて下さっているお蔭と、心より感謝申し上げます。

 

 今年一年、本当にどうもありがとうございました。拙いブログですが、来年も引き続きどうぞよろしくお願いいたします。それでは皆さん、良いお年をお迎え下さいね~!