そんな風に思ってしまう作品が誰にでも1曲や2曲はきっとあるはず…ですよね(←そうかなぁ)。今回は、聴くたびに私がそんな気持ちに駆られずにはいられない作品をご紹介したいと思います。これで~す()。
「LOVING YOU」(deeps)
作詞:伊秩弘将、作曲:伊秩弘将、編曲:水島康貴
[1998.5.27発売; オリコン最高位24位; 売り上げ枚数5.9万枚]
[歌手メジャー度★★★; 作品メジャー度★★; オススメ度★★★★]
このブログでは久々に取り上げる‘90年代作品です。“小ヒット”と言っていい程度の売り上げを記録した曲なのですが、おそらく作品も歌い手もご存じない方が多そう…。なので、少しばかり説明しておきましょう。
deeps(ディープス)は、雑誌『egg』の読者モデルだったメンバーを中心に、1997年にシングル「Love is Real」で歌手デビューした“渋谷の女子高生(というコンセプトの)”3人組です。彼女たちのプロデューサーは、当時SPEEDを大ブレイクに導いて一躍有名になった伊秩弘将で…という説明だけで、「おやっ」と感じたあなたは実に勘がいい…そう。“deeps”というグループ名は、SPEEDをちょうどひっくり返した表記になっているのです(もっとも、厳密に言うと「deeps」の“s”の下に二重線をつけた表記が正しいのですが…)。
そんなわけでdeepsのデビュー当時、巷では、「SPEEDのお姉さんバージョン」とか「SPEEDの姉貴分」というとらえ方をされていたフシがあります。でも、当時本当に子供だったSPEEDメンバーの“なれの果て”がdeepsだとしたら、私は何だかヤダなぁ…と思いましたねぇ。何しろdeepsときたら、“歌はシロウト”、“歌詞はベタで下世話”、“振り付けは安易”…。どの要素をとってもSPEEDとは真逆の線を意図的に狙った売り出しコンセプトだったんですから。「SPEEDの姉貴分」というよりも、「裏SPEED」、「SPEEDのパチもん」といった表現の方が合っていたように思うのです。「デビュー直後にメンバーの一人が素行不良でチェンジ」、「そのオリジナルメンバーも、1人は短大生、もう1人は高校を中退していて、ホントの女子高生は1人しかいなかった」などの“いかにも”なエピソードも、当時は「何だかなぁ」と思った私も、今となっては懐かしく感じる次第です。
もともと期間限定ユニットとして売り出された彼女たちですが、セカンドシングル「ハピネス」がオリコン最高位17位、売り上げ枚数9.4万枚と、まずまずの数字を記録。“deeps”名義でリリースした7枚のシングルをすべてオリコン50位以内に送り込むなど、当時のアイドル的位置づけの歌手としては意外にも良い数字を残しました。そんなこともあってか事務所サイドはプロデュースの継続を望みましたが、伊秩センセは「自分のやりたいことはすでにやり終えた」と打診を拒否。その後はグループ表記を“dps(読みは同じ)”に変え、作家陣を一新して2001年までにさらに6枚のシングルをリリースしましたが、売り上げは徐々に尻すぼみになり、本家SPEEDよりもひと足先にフェイドアウトしてしまいました。
それにしても、伊秩センセがあえてSPEEDのダークサイド・バージョンをデビューさせてまで“やりたかったこと”とは、一体何だったのでしょうか 私には未だによく分からないんですよね…。ただ、プロデューサーとしての彼が、SPEEDのようにある意味“極限状態”を体現するようなスーパーグループの人気を維持するために背負うプレッシャーとストレスはさぞ過酷だろうなぁ…というのは、素人の私でも容易に分かります。そう考えると、伊秩センセはdeepsで特に何かをやりたかったワケではなく、あえてツッコミどころ満載の“裏SPEED(=deeps)”を手がけることで、SPEEDに由来する重圧から逃れるために心のバランスをとっていたのではないか…、そんな風に思えて仕方ありません。そして、deepsが本家SPEEDよりも売れなくて一番ホッとしたのは、他ならぬ伊秩センセだったのではないかなぁ、と私は思っているのです。
さて、私の妄想はこのくらいにして、曲の話に移りましょう。伊秩弘将センセがdeepsに書いた詞の内容といえば、♪ いい感じにでき上がったら まったりラブホで~(from 「ハピネス」)とか、♪ 舌を入れたキスで 遠くへ連れてって~(from 「Maybe Love」)とか、♪ キスして 口説いて 奪って 近づきたい 付き合いたい あなたと~ などなど、肉食系“コギャル(←うわぁ、死語にもほどがある…)”のどぎついフレーズがつい真っ先に頭に浮かんで、私はどうも拒絶反応を示してしまうのですが、実はそうしたエ□歌詞と大抵セットになっているのが「そんなコギャルでも実は根は純粋なんだよ…」というメッセージです。
今回ご紹介する「LOVING YOU」でも、好きな彼がいるのに別の男のコと遊んでキスされちゃう…という冒頭のシチュエーションは、“コギャル”の行動パターンをなぞったもの。でも、他のdeepsのシングルと比べると、変に下世話なフレーズが登場しない分だけ、共感できる内容になっているように思います。それではここで、「LOVING YOU」の歌詞を書き下してみましょう。
♪ 週末賑わう Lonely Street 男の子と逢っていても
あなたじゃなくちゃ寂しい 今頃何してるの?
キスされた瞬間 心は空しかったよ
遠くへさらって 欲しかったのに
Loving you 悔しいけどやっぱり
あなた以外に 誰も好きになれない
Yes, I’m loving you ずっと放っておかれたら
どこかへ消えちゃっても 知らないから
ちゃんと つかまえてて
♪ かなり嫉妬深いのは 最初から勘弁だけど
遊び人の彼持つと あとあと苦労するね
理想の恋なんて きっとどこにもないから
大事なのは 必要かどうか…
だよね Loving you 悩み聞いてもらっても
結局気づけば ただのノロケになるね
‘cause I’m loving you 明日綺麗にしていこう
私の実力は全部 彼にまだ見せてないから
Loving you いま始まるよ History
どんなにつらくても この想いは 止められないから
いかがですか。♪ 私の実力は全部彼にまだ見せてないから…な~んて強がるあたりとか、ちょっといじらしさを感じるほどの内容でしょう。そしてこの曲なら、SPEEDがもう少し成長した段階で歌わせても違和感ないのでは…? と思いませんか。メロディの出来の良さから判断して、私なんぞは、「実はSPEED用に書き下ろした曲なのではないか…?」と未だに疑っているくらいです。
ちなみに、曲の構成は、A-B-C(サビ)-C‘- A-B-C(サビ)-C‘-C‘で、サビメロ重視タイプ。マイナーコードのA&Bメロと、とびっきり美しいメジャーコードのサビ(C&C’メロ)が見事なコントラストを成して作品全体に変化を持たせている点、イントロ中盤やブレイクに登場する切ないメロディのバッキング、昭和のムード歌謡さながらのバックコーラス…あたりが聞き所の名曲だと思います。…しかしそうなってくると、deepsのヴォーカルに決定的に表現力が足りないのがつくづく惜しいんだよなぁ。そんなこんなで、「少しオトナになったSPEEDに歌わせてみたかった…」と思わずにはいられない典型的()な昭和オヤヂなのでありました…。
それでは、今回はこんなところで またお逢いしましょう~