【お薦めシングルレビュー 38】 ピュアな歌詞と美しい旋律が清純派アイドルにピッタリの名作! | 歌謡曲(J-POP)のススメ

歌謡曲(J-POP)のススメ

音楽といっても数々あれど、歌謡曲ほど誰もが楽しめるジャンルは恐らく他にありません。このブログでは主に、歌謡曲最盛期と言われる70~80年代の作品紹介を通じて、その楽しさ・素晴らしさを少しでも伝えられればと思っています。リアルタイムで知らない若い世代の方もぜひ!

 我が家の2人の息子達は、もうすぐ8才と7才になるのですが、この年齢の子供ってのは、自分達の持っているオモチャをあれこれと駆使して、“○○ごっこ”に興じるのが大好きなんですよね~。赤ん坊の頃に散々遊び倒したオモチャも、息子2人の“ごっこ遊び”が始まると、こちらが想像しなかったような新しい使い道で再び息を吹き返したりなんかして、親が「このオモチャはもう要らないよね」と丸め込もうとしても、なかなか納得してもらえません。かくして子供部屋は“オモチャ王国”なる様相を呈するワケです・・・。まぁ、自分もガキの頃はまったく同じようなやりとりで親を困らせた経験があって、息子達の気持ちもよ~く理解できるので(いや、単なる“負い目”なだけか)、もうそれ以上は何も言わないことにしています

 私が小学校の頃を思い出してみると、狭い子供部屋を毎月着実に席捲していったのが、“小学○年生”(小学館)と、“学習・科学”(学習研究社)の付録
だったんですねぇ(←今思えば、あれこれ手を出しすぎですよね)。学習・科学の付録の方は“オモチャ”と“教材”が折衷されたような代物で、しばらく使ったらあまり執着もなく処分してたのですが、“小学○年生”に付いてくる“なぞなぞ本”とか、“ヒットソングブック”とか、“スター・トランプ”なんかは、もうほとんど“宝物”級の扱いで、なかなか捨てられなかった記憶があります。 さて、前フリはこんなところにして、今回取り上げる作品の紹介に移りましょう。まずはこのフォトから()。



 やぁ、懐かしいなぁ・・・実はこれ、当時、私が買った「小学5年生」に付録として付いてきた(つまり37年前の)紙トランプなのです。おっと、急いで補足しておきますと、これは私のトランプではなく、物持ちのいい”同い年の見知らぬ方”がネット上にアップしてくれた中から1枚拝借してきたもの。でも、私も当時このトランプを後生大事に使っていただけのことはあって、この“森田つぐみ”の写真をバッチリ覚えてましたよ~ そりゃもう、何と言っても可愛かったですし、まだ小学生のガキには彼女のピュアなイメージが受け入れやすかったんですよね。

 そんなこんなで、今回はこの作品で~す


「少女期」(森田つぐみ)
作詞:千家和也、作曲:大野克夫、編曲:竜崎孝路

[1976.4.25発売; オリコン最高位84位; 売り上げ枚数1.0万枚]
[歌手メジャー度★★; 作品メジャー度★★; オススメ度★★★★]




 森田つぐみの記念すべきデビュー曲「少女期」は、セールス的にはオリコン100位以内に入るのがやっとこさ・・・
ということで、この作品をちゃんとご記憶の方はあまりいないかも知れません。でも、50歳代以上の方なら、彼女の名前と顔の組み合わせくらいはおぼろげに覚えておられるのではないでしょうか・・・(くれぐれも、森田日記と間違えちゃいけませんぜ、そこのお父さんっ

 森田つぐみは、NETテレビ(現在のテレビ朝日)系のスターオーディション番組「あなたをスターに!」で第2回のグランドチャンピオンに輝いた
ことをきっかけに、17歳で歌手デビューを飾りました。気になるキャッチフレーズは、「小鳥とショパンと17才」(←あまりの”品の良さ”に思わずため息が出ちゃいますね・・・)、プロフィールに掲げられた特技が 「書道3段、珠算3段、お花もたしなみます」・・・となると、これはもう、彼女を“清純派のお嬢さま”として売り出したいというスタッフの意気込みがヒシヒシと伝わってくるというものです。

 ところが、彼女がデビューした1976年と言えば、あのピンク・レディー
が、当時としてはかなり過激な振り付けと衣装で颯爽と登場して人気を博した年でもあって、芸能界自体が単に「清純派」というだけではもはや通用しない世界になりつつあったんですねぇ・・・。歌番組に出た彼女の笑顔や仕種は、それはもう間違いなく可愛いかったのですが、別に歌唱力があるわけでもなく、かといって強烈なキャラの持ち主というわけでもなく、要するに「地味」だったんですよね・・・(同じクラスにいたら、「男心をくすぐるタイプ」で間違いなくモテモテのはずなのに)。

 かくして彼女は、シングル3枚とアルバム1枚を残して歌手としてはあえなくフェイド・アウト
。その後、バラエティ番組「見ごろ食べごろ笑いごろ」で、キャンディーズ・フォロワーとしてデビューした“フィーバー”と、再起を賭けてレギュラー争奪戦を繰り広げましたが、あえなく敗退。ASAYANの企画「再起に賭ける芸能人」の胡桃沢ひろこではありませんが、この一部始終はちょっと可哀想で見ていられないものがありました(彼女は所属事務所が渡辺プロダクションだったので、参戦したのは事務所の意向で、しかも単なる”噛ませ犬”だった可能性が大()ですが、本当のところは分かりません・・・)。1980年頃には、NHK教育テレビ「ふえはうたう」で久しぶりに姿を見かけて嬉しかった記憶がありますが、割とあっという間に降板させられてしまったようですね

 本来ならば、何らかのチャンスを掴んで芸能界入りしたコには、「大スター目指して頑張ってねっ
」と激励すべきところなのでしょうが、彼女の場合は、「芸能界ってのはアナタみたいなコのいるような所じゃないよ・・・と、思わず諭したくなってしまうタイプの女の子なのでした。う~ん、本人の幸せを考えても、やっぱり“クラスの可愛いいコ”くらいの方が良かったような気がしてしまうのは私だけですかねぇ・・・

 それでは、気分を切り替えて作品の方を見てみましょう
。まず、歌詞はこんな感じになっていま~す


(セリフ) あなたに逢えて何かが分かりかけました
      何かをつかみかけました・・・

  ♪ あなたの前に出る時だけは 飾りや嘘のない娘でいたい
    涙に濡れたくちづけの中 見つけたものを大事にしたい
    難しいことは分からないけれど 好きなんです 心から愛しています
    女の子に生まれたこと あなたを知ってから 誇りなんです
    (くりかえし)

  ♪ あなたの胸に抱きとめられて 静かに夢を見る娘でいたい
    小鳥が羽を休めるように その手の中で眠っていたい
    恥じらいも何も忘れそうなほど 好きなんです どこまでも信じています
    女の子に生まれたこと あなたを知ってから 誇りなんです
    (くりかえし×2)




 いきなり始まるたどたどしいセリフ全編にわたってピュア度の針が振り切ってしまっている
メルヘンチックな歌詞・・・どの部分をとっても、私みたいな五十手前のオヤヂが素面で語るには厳しいものがありますが(←好きでやってるクセに)、清純派アイドルとしてデビュー曲であることを踏まえると、なかなか理想的な出来映えだと思うんですよね

 だけど最近の若い世代からは、「なんじゃこの時代遅れの歌詞は~
と、きっと鼻で笑われてしまうんだろうなぁ・・・ いや待てよ。もしかすると年配の方の中にだって、「男の視点から一方的に“理想の女性”を描いただけじゃないのか・・・とおっしゃる方がいるかも。でもそれは、悪い意味で「あなたの感覚がすれてしまっている」だけのことかも知れませんよ~ 「プラトニックな恋愛の素晴らしさ」を純粋に享受できるのは若い頃の“特権”であって、歳をとって人生経験を重ねるとそういう意識を持ち続けるのが難しくなってくる・・・私はそんな風に感じるんですがいかがでしょうか。いやマジで

 で、この作品の“キモ”となっているセリフは、やはり 
女の子に生まれたこと あなたを知ってから 誇りなんです」 ですよね。・・・これ、なかなか出てきそうで出てこないフレーズですよ~。普通、恋に落ちると誰でも感情が不安定になって、いわゆる「恋に溺れた状態」に陥りがちなものなのに、この作品のヒロインは、ピュアな感性を以て、実に冷静にそしてナチュラルに一段上のステージに到達しています彼女の持つ清楚で上品なイメージを損なわないよう、細心の注意を払って作られた詞だと言えましょう。

 大野克夫センセと竜崎孝路センセのコンビによるメロディ&アレンジの方も実に丁寧に作られていて、好感度∞
 セリフを乗せてゆったりと優雅に流れるイントロややアップテンポで明るい未来を予感させてくれるAメロへのブリッジA-B-サビへと清らかさを保ちながら徐々に盛り上がってゆく一連のメロディ・・・、どのパートもとても美しい旋律で構成されていて、本当に心が洗われるかのよう


 いやぁ、’70~’80年代にリリースされた歌謡曲って、こういう宝石のような佳曲がまだまだ埋もれているからやめられない
んですよね

 最後に彼女の名前について少しだけ。平仮名で「つぐみ」と来れば、私なんかはあのちっちゃくて可愛い”野鳥”(=鶫)を連想してしまうので、「なかなかいい芸名をつけたよなぁ」と思ってたら、実はこの名前の読みは、彼女の本名(漢字で書くと「嗣美」)なんだそうです。う~む、これは「美しさを(親から)嗣(つ)ぐように」という、親御さんの思いがこもった名前なんでしょうか・・・ その意味では願いは叶っているのでしょうけれど、アイドル歌手としてデビューするとなるとやはり平仮名にして正解だったと思いますね

 それでは今回はこの辺でおしまい
 またお逢いしましょう