【シングルよもやま話 37】 若々しく味わいのあるヴォーカルが魅力の”あの大ヒット曲”の元歌! | 歌謡曲(J-POP)のススメ

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音楽といっても数々あれど、歌謡曲ほど誰もが楽しめるジャンルは恐らく他にありません。このブログでは主に、歌謡曲最盛期と言われる70~80年代の作品紹介を通じて、その楽しさ・素晴らしさを少しでも伝えられればと思っています。リアルタイムで知らない若い世代の方もぜひ!

 さて今回は、またまた時をずぅ~~~っと遡(さかのぼ)ってみましょうか。タイムマシンの目盛りを1970年にセットして、っと某大ヒット曲の元歌として知られるこの作品でいってみたいと思いま~す


「ひとりの悲しみ」(ズー・ニー・ヴー)
作詞:阿久悠、作曲:筒美京平、編曲:筒美京平

[1970.2.10発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数-万枚]
[歌手メジャー度★★; 作品メジャー度★; オススメ度★★★]




 
 ズー・ニー・ヴーは、1968年10月に、“メンバー全員が現役大学生”という触れ込みでアルバムデビューを飾った男性6人組のグループです(いまや、子供の2人に1人が大学に進学する時代になりましたが、当時の大学進学率は15%程度、男だけでも25%に過ぎなかったので、そんなフレーズが“ウリ”になったのでしょう
)。彼らは、ヒットしたセカンドシングル「白いサンゴ礁」(1969.4.1発売、オリコン最高位18位、売り上げ枚数17.7万枚)のイメージが強いせいか、“グループ・サウンズ(GS)”の一つとして語られることが多いのですが、歌唱もサウンドも、GSよりもR&Bと言った方がしっくり来るんですよね~。彼らのアルバムなんか聴くと、一層そんな風に感じます


 それはそうと、今回ご紹介する「ひとりの悲しみ」のシングル・ジャケットをとくとご覧になって下さいよ~
1970年リリースということを考えると、随分と「垢抜けてオシャレ」な感じがしませんか ちなみに、ズー・ニー・ヴーとしてリリースされた他の4枚のシングルを見てみると、(3枚目の「可愛いあなただから」はともかくとして、)残りの3枚は、構図・ポージングともにいかにも旧態依然としたGSチックな写真が使われています。で、どういうわけか「ひとりの悲しみ」だけが、ちょっと傑出して洗練された出来映えのジャケットになってるんですよね。不思議ですねぇ・・・

 それでは今回は、先にYouTubeで曲の方を聴いて戴きましょう
。・・・どうぞ~



 種明かしする前に、すでにご存知だった方も多いんじゃないでしょうか
。・・・そう、これは先日惜しくも亡くなられた尾崎紀世彦サンの大ヒット作「また逢う日まで」と同じ曲なんですねぇ。ちなみに、作詞はどちらも同じ阿久悠センセの手によるものですが、ほとんど九割方“書き直し”と言って良さそう。ざっとこんな感じですね()。


「ひとりの悲しみ」(ズー・ニー・ヴー)
  ♪ 明日が見える 今日の終わりに
    背伸びをしてみても 何も見えない
    なぜか淋しいだけ なぜか虚しいだけ
    こうして始まる ひとりの悲しみが
    心を寄せておいで あたためあっておいで
    その時二人は何かを見るだろう


「また逢う日まで」(尾崎紀代彦)
  ♪ また逢う日まで 逢える時まで
    別れのその理由(わけ)は 話したくない
    なぜか淋しいだけ なぜか虚しいだけ
    互いに傷つき すべてを失くすから
    二人でドアを閉めて 二人で名前消して
    その時心は何かを話すだろう


 阿久センセによると、ズー・ニー・ヴーの方は、“安保闘争(←いかにも”時代”ですよね
で挫折した若者の孤独な心情を表している”とのこと。でも、ちょっと漠然とし過ぎていて状況が分かりにくいんですよね・・・。その点、尾崎バージョンでは、同じ“淋しさ”でも男女の別れをテーマにすることでシチュエーションがすんなりと頭に浮かんでくる見事な出来映えなのではないかなぁと“別れの理由を言葉にするよりも黙っている方がいい”・・・この冒頭の歌詞には、阿久センセが好きだった“やせ我慢の美学”が、如実に現われているように思います

 ・・・じゃあ、元歌の方は売れなかったし、やっぱり失敗作なのか・・・
と問われれば、私は決してそう思いません(きっぱり)。ズー・ニー・ヴー版の方は何と言っても、若々しいのに味わい深いヴォーカル町田義人の声質と、メリハリが効いていて飛び跳ねるような歌唱がとってもいい持ち味になっていると思うんです。それに、もともと曲の方は筒美京平センセということもあって、いわゆる“歌謡曲”の枠を越えるスケールの大きなメロディ展開の魅力が存分に味わえますしネ。私が先に知ったのは皆さんと同じく尾崎バージョンですが、ズー・ニー・ヴーの方を先に聴いていても、間違いなく気に入っていただろうなぁ

 ・・・さて、皆さんは「ひとりの悲しみ」と「また逢う日まで」、どちらがお好きでしょうか・・・


 えっと、念のため補足しておくと、町田義人はほどなくズー・ニー・ヴーを脱退してソロデビュー
薬師丸ひろ子も出ていた角川映画「野性の証明」のテーマ曲「戦士の休息」がヒットしています(1978.8.10発売、オリコン最高位6位、売り上げ枚数29.5万枚)。 ♪ 男は誰もみな~ 無口な兵士~ のフレーズが印象的だったアレですね

 ちなみに町田義人本人のご面相はというと、オデコ丸出しのショットがあったり、時にはヤケに厳つい表情だったりと、あまりパッとしません・・・
(失礼)。現在は歌手活動されてないようですが、これだけ魅力的な声の持ち主なんだから、個人的には活動再開を期待したいところなんですけどね


 それでは、今日のところはこれでおしまい
 またお逢いしましょう~